【この人に聞く】 厚生労働省 監視指導・麻薬対策課 小川雄大危害情報管理専門官〈下〉/機能性表示判断の「たらいまわし」課題

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 機能性表示食品の届け出表示に、「薬機法違反の恐れがある」との指摘が行われるという、極めて異例の展開を見せた、いわゆる「歩行能力の改善」問題。消費者庁による事業者への撤回要請は、機能性表示食品制度に、克服すべき課題があることを示した。厚生労働省医薬監視指導・麻薬対策課・小川雄大危害情報管理専門官は、機能性表示の薬事的な判断に、事実上の「たらい回し」が生じている現状に対して、「課題だと認識している」と話した。

 ─それにしても、いきなり撤回要請というのは釈然としないという事業者もあります。
 小川 今回の件について言っておかないといけないのは、あくまで一商品の広告について、薬機法違反の恐れがあったため、厚労省から消費者庁に情報提供をしただけということです。厚労省が撤回要請を行ったわけではありません。
 ─業界内には、厚労省が今回の指摘を行ったのは、「医薬品業界からの圧力があったからではないか」といぶかしむ声もありますが。
 小川 未承認医薬品を発見する端緒は、いろいろとありますが、多くは消費者からの通報です。個別の案件について、端緒をつまびらかにすることはしませんが、少なくとも医薬品業界から圧力を受けて今回の処分に至ったということは絶対にないということはいえます。
 ─今回の経緯を考えたとき、事業者は最初、「歩行能力の改善」という表現が、OKかどうか判断がつかない状態で届け出を行ったのではないでしょうか。届け出が受理されたため、OKなのだと判断して表示を行ったのだと思います。今回の件で、事業者は、事前に何をしておけば良かったですか。「歩行能力の改善」という表現が、医薬品に当たるかどうかを、厚労省に問い合わせておけば良かったですか。
 小川 個別の製品が医薬品に当たるかどうかの判断は、基本的に自治体が行っています。一部、判断が微妙な案件については、個別の案件の判断を直接厚労省が行うこともなくはないですが、機能性表示の内容について厚労省が薬事該当性をチェックするというのは制度の趣旨として違うと考えています。マンパワー的にもそれは無理です。
 ─では、事業者は、地方自治体に事前問い合わせを行っておけば良かったですか。
 小川 機能性表示食品の表示ということだと、自治体の薬務担当課からは「制度を所掌していないので判断ができない」と言われてしまうかもしれません。自治体は、機能性表示食品の表示については、制度を所掌している消費者庁に聞いてください、とおそらく言うでしょう。
 ─そうすると、「消費者庁に事前に聞いておくべき」ということになるのですか?法令上、口に入るものの内、医薬品以外が食品ということになっていると思いますが、消費者庁に「医薬品」の判断の権限がないから、今回の問題が起こっているのではないですか。
 小川 確かに、消費者庁では医薬品かどうかの判断は行えません。
 ─それでは結局、たらい回しになってしまうのではないですか。
 小川 厚労省としても、そこが課題だとは認識していて、消費者庁と現在、協議を行っているところです。どういう形が一番良いのか、届け出制度という趣旨も踏まえて検討しています。
 ─消費者庁との協議の結果、「何もしない」という結論に至る可能性もあるのですか。
 小川 われわれとして「課題」と捉えているということは申し上げられると思います。機能性表示食品としての届け出が受理された機能性表示食品について、薬機法違反を指摘されてしまう事業者の気持ちを理解できないわけではありません。事業者からの事前の相談も、必ずしも厚労省として受けないわけではありません。
 ─機能性表示食品の届け出を消費者庁が受け付けるたびに、厚労省にも届け出書類が回ってきて、各案件について、医薬品に該当しないかを厚労省が判断するという仕組みにすれば、一番すっきりするような気もしますが。
 小川 そもそも届け出制度の趣旨に反するので難しいと考えます。

 2007年、厚生労働省に入省。14年、厚生労働省医薬食品局食品安全部基準審査課。18年7月から、厚生労働省医薬・生活衛生局監視指導・麻薬対策課にて危害情報管理専門官を務める。

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