消費者庁 〈消契法で通販EC、競売の規制議論か〉/購入トラブル問題視か

  • 定期購読する
  • 業界データ購入
  • デジタル版で読む

 消費者庁が2月に立ち上げた、大学教授らを委員に据えた「消費者契約法改正に向けた専門技術的側面の研究会」で、通販・ECに対して新たな規制が始まるのではないかという懸念の声が上がっている。2月開催の第1回会合で配布された資料には、定期購入やネットオークション(競売)などCtoCを含む通販・ECに関するトラブルの内容が盛り込まれ、問題提起されている。消費者トラブルの増加を伝える資料には、「ターゲティング広告」といった具体的な名称まで取り上げられており、消費者契約法専門調査会で議題に上がった「広告が勧誘に当るか」という議論が再燃する可能性もあり注視する必要がある。


 消費者庁が研究会で配布した資料には、インターネットや情報通信に関するトラブルが増加していることを明記。EC市場が12年度から5年間で約1.5倍に拡大していることに加え、健康食品や化粧品などといった消耗品の定期購入トラブル、個人間売買(CtoC)のトラブル増加を問題視しているようだ。
 資料では、ECで商品を購入したユーザーの行動履歴を元に特定の消費者に広告を配信する「ターゲティング広告」についても言及。「消費者は通常の広告よりもSNSに表示される広告の文言を印象深く覚えていることもある」と指摘している。
 近年、相談件数が増加傾向にある定期購入については、国民生活センターの相談事例を挙げ「ダイエットサプリを300円でお試し購入できるというSNSを見て購入した。お試し購入後、24日以内にキャンセルしないと定期購入したことになる」といったケースを紹介した。
 そのほか、フリマアプリやネットオークションなどのプラットフォームビジネス、AI(人工知能)やビッグデータの市場の拡大傾向に伴うトラブルも例示している。これらを踏まえると、インターネットに関わる商取引全般について何らかの議論をすることが予想される。
 資料には「ターゲティング広告」という具体名が取り上げられていることから、前回の消費者契約法専門調査会で規制が見送りになった「広告が勧誘行為に当たるかどうか」の議論が再燃する可能性も注目されるところだ。
 17年1月に健康食品通販のサン・クロレラ販売に対し、消費者団体が折り込み広告の差し止めを請求していた裁判で最高裁は、「広告も『勧誘』に当たりうる」との文言を盛り込んだ判決を下している。これも今回の研究会の議論にどのような影響を及ぼすか、懸念材料の一つだ。
 もう一つ議論の中心になりそうなのが、「社会的な経験が乏しい」「知識や経験、判断力不足に陥りやすい」とされている高齢者による契約だ。
 消費者庁は、研究会の検討課題として「つけ込み型」を新たな規制対象としているが、具体的にどのような勧誘行為を指すのかは不明だ。「合理的判断ができない事情の不当な利用に関する取消権」については、これまでも消費者契約法専門調査会において検討が行われてきた。
 通販で懸念されるのは、アウトバウンド(発信電話)で商品を受注する場合だ。ある通販会社では「電話で話を聞くだけで、購入に結び付くケースもある」と話す。こうした接客を「つけ込み」と判断されるかどうかが注目される。
 消費者契約法は、通販・ECを直接的に規制する特定商取引法と異なり、全ての商取引に関わる。消費者庁は、議論の根拠としている消費者トラブルのデータについて、通販・ECに関わるものがどのくらいあるのかをきちんと明示する必要があるだろう。過去に何度も議論を重ねて見送られてきた検討課題だけに、今回の研究会でどのような議論となるのか動向に注視したい。

記事は取材・執筆時の情報で、現在は異なる場合があります。

Page Topへ