【トランプ関税で越境ECに地殻変動】「米中以外」を模索する動きも(2025年5月1日・8日合併号)

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 中国・米国向けの越境ECの市場は拡大を続けている。経済産業省の23年の推計によると、日本からの越境ECにおける、中国消費者の購入総額は2兆4301億円、米国での購入は1兆4798億円に達したという。ただ、ここにきて、トランプ関税が、世界の越境EC市場を混乱させる要因となっている。トランプ関税後の越境EC市場で勝ち抜くため、米中以外への展開を志向する事業者も増えているようだ。今後さらに競争が激化する中国市場での成功に向け、爪を研ぎ、準備を進める越境EC企業もある。大規模な地殻変動の中、正解が見えづらくなっている今だからこそ、最も大きな成功をつかむチャンスともいえそうだ。

■越境ECの購入/額トップは中国

 経産省が発表した「令和5年度 電子商取引に関する市場調査」の「各国間の越境EC市場規模の推計結果(23年)」によると、日・米・中の3カ国間の越境ECの市場規模を比較した際、最も市場規模が大きかったのは中国だった。中国の総市場規模(他の2国から越境ECで購入している総額)は、前年比7.7%増の5兆3911億円。米国は前年比14.4%増の2兆5300億円。日本は、前年比6.4%増とはいえ4208億円にとどまった。


■トランプ関税の影響/「軽微・なし」は4%

 4月30日時点で、トランプ関税による混乱が続いている。現在も日米関税交渉が行われている。
 JETRO(ジェトロ、独立行政法人日本貿易振興機構)が実施した「米国トランプ政権の追加関税に関するクイック・アンケート調査結果」によると、「一律10%のベースラインの関税・相互関税」について、「影響がある」(46.1%)、「今後影響が出る可能性がある」(36.4%)という悲観的な回答が合計で8割以上に上った。調査期間は4月11~16日、回答者は7589件だった。
 「ビジネスに与える具体的な影響」としては、「日本から米国向け輸出の減少」(63.1%)が最も多かった。「全世界的な景気後退に伴う売上高・利益率の減少」「第三国拠点からの米国向け輸出の減少」「米国内販売の減少」「米国以外の国・地域向け輸出の減少」が続いた。「影響は軽微・影響はない」という回答は、わずか4.3%にとどまった。
 本紙でも独自に、越境EC関連事業者を対象にアンケート調査を行ったが、米国からの購入減を懸念する声が多かった。「今後マーケティング効率が悪化し、収益が大幅減となる」「関税の受け取り人負担を理由に、現地で受け取り拒否が生じる可能性がある」と言う事業者もあった。


■好影響もありうる?

 一方で、トランプ関税が吉へと転ずる可能性もある。「ビジネスに与える具体的な影響」を聞いた、ジェトロのアンケートには、5.5%の事業者が「プラス面での影響(相対的な競争力の増加など)」と回答した。実際、米国では、今後のさらなる関税アップを見越して、海外製品を買いだめする動きも生まれている。一時的かもしれないがプラスの影響を享受している日本企業は間違いなくあるようだ。

(続きは、「日本流通産業新聞 5月1日・8日合併号で)

記事は取材・執筆時の情報で、現在は異なる場合があります。

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