<消費者委員会>通販のチャット勧誘に規制か/電話勧誘販売との類似性を指摘(2023年2月16日号)

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■能動的な通販を問題視

 2月14日に開催された、消費者委員会の「デジタル化に伴う消費者問題ワーキング・グループ」で、「チャット機能を利用した勧誘を伴う通信販売」について、新たな規制を導入すべきとの意見が出された。有識者からのヒアリングで、司法書士の山田茂樹氏と弁護士の池本誠司氏が、チャット機能を利用した消費者問題の現状と、法規制の方向性について意見を述べた。池本氏は、「チャットによる通信販売の勧誘は、電話勧誘との類似性がみられることなどから、通販事業者を対象に、規制事項を検討すべき。販売事業者だけでなく、勧誘を行う第三者を対象とするかも検討する必要がある」と指摘した。今後の規制導入につながる可能性もある。
 SNSのメッセージを利用する取引は、「短文で複数回やり取りを行う」「プッシュ通知や既読機能により返信を迫られる」といった特徴を持つため、電話勧誘販売との類似性が見られるという。従来の通販のように、事業者が受動的に販売するのではなく、能動的に販売していることが問題視されている。二人だけのやり取りとなる「密室性」や、チャットならではの「匿名性」も、チャット勧誘の問題点として取り上げられていた。
 弁護士の池本氏は、「これまでの通信販売の規制は、あくまで販売事業者が受動的に販売することを想定して作られたものだ。チャット機能を利用して、能動的に販売している場合は、電話勧誘販売などと同等の規制を設けるべき」と主張した。
 SNSには、(1)不特定多数に向けてメッセージをオープンに発信する投稿機能(2)特定の相手に対し、メッセージをやり取りする機能─の2種類がある。(2)をチャット機能として、特別な規制を設けるべきだと、池本弁護士らは提案している。ウェブサイト上で、アンケートや質問を設定し、回答した消費者に対し、個別のチャットでやり取りをする場合も含まれるとしている。


■不意打ち性を対象に

 池本氏は、規制の対象となる個別勧誘は、「不意打ち性のあるもの」に限定すべきだとしている。「商品販売や役務提供の目的を告げず、チャットのやり取りを開始させた場合を対象とする。消費者側から問い合わせがあった場合や、商品販売の意思を表示している場合は該当しない」(同)と話す。


■「時間軸」問題にも言及

 池本氏はチャット機能を利用する通販事業者は、勧誘に先立ち、(1)販売事業者等の名称(2)その連絡先(3)勧誘者の氏名(4)商品・役務の種類(5)勧誘する目的─を明示するよう義務づけるべきだとしている。
 山田氏も規制に関し、「既存の規定で対応できることを把握した上で、新たな規定を設けるべき」としていた。
 山田氏は、チャット機能を利用した勧誘について、「時間軸」の問題についても言及。「景品表示法や薬機法などで、『現在の表示の在り方』については規制がなされている。チャットを用いた勧誘は、継続した日々のやり取りになりうる。その危険性にも着目する必要がある」と話す。
 消費者委員会の後藤巻則委員長は、「規制の対象を、チャット限定にするのか、通販全体とするのか、実際の問題を踏まえた上で、検討することが必要。チャット勧誘は、電話勧誘との類似点が多く、同一の規制でもおかしくない。電話勧誘と同一の規制にするのか、規制を新設するのかについても、現状の問題に対応できるかどうかを含め、慎重に検討していく必要がある」と話していた。

記事は取材・執筆時の情報で、現在は異なる場合があります。

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