<消費者庁> 景表法改正を8人の有識者が分析/「確約手続きの導入」にはリスクも(2023年1月26日号)

  • 定期購読する
  • 業界データ購入
  • デジタル版で読む

 消費者庁はこのほど、「景品表示法検討会報告書(以下報告書)」を公表、消費者庁が考える、景表法の制度改正の方向性が明確になった。「確約手続きの導入」や「課徴金の割増」「直罰の導入」といった、景表法にはこれまでなかった考え方が盛り込まれており、業界の話題となっている。消費者庁では、今春の通常国会への、景表法改正案の提出を目指すという。本紙ではこのほど、景表法に詳しい8人の有識者を緊急取材。制度改正に伴う、課題や懸念を、事業者の視点から洗い出した。例えば、「確約手続きの導入」について、業界では、「措置命令を受けるリスクが減る、ありがたい制度」と受け止める人も少なくないが、実際には、「社名を公表されたうえに、金銭的な負担を負うことになる」リスクも考えられるという。

■目玉は「確約手続き」

 報告書では、「早期に対応すべき事項(以下早期対応事項)」として10項目、「中長期的な検討課題(以下中長期課題)」として4項目、計14項目が整理された=別表。「早期対応事項」として挙げられた項目については、今春の通常国会での法改正に盛り込まれる可能性が高いと考えられる。
 「早期対応事項」で挙がった「確約手続きの導入」について、D2C業界の薬事マーケッターであり、薬事コンサルタントを行うリーガルエックス(本社東京都)の関山翔太社長は、「報告書の目玉」だと話す。一方で、「導入について現時点では、あまり肯定的な見方をしていない」とも言う。
 弁護士法人丸の内ソレイユ法律事務所の阿部栄一郎弁護士も、確約手続きの導入について、「まだ課題があると考えられる」と指摘する。
 「確約手続き」とは、景表法上の行政処分を行うべき案件であっても、事業者が、表示の改善や、消費者への返金など、自主的な是正に向けた取り組みを計画し、当局が認定した場合は、当局が措置命令と課徴金納付命令を行わないとする制度だ。意図せず不当表示を行った事業者が対象となる。
 すでに独占禁止法には確約手続きが導入されており、運用例もある。報告書では、「景品表示法においても、独占禁止法を参照した確約手続を導入することで、不当表示事案の早期是正を図るべき」としている。
 薬事法広告研究所の稲留万希子氏は、「措置命令による信用の失墜を恐れている企業は多いため、解約手続きの導入制度を積極的に利用する企業も出てくると考えている」と話す。
 東京神谷町綜合法律事務所の成眞海(せい・しんかい)弁護士も、「報告書にあるように一口に違反表示といっても悪質性は千差万別で、かなり悪質な表示が放置される一方、違反の意図のない事業者が行政処分を受けるといった不公平感を招いていたように思う」と言う。そのため、確約手続を導入し、悪質な事業者にはより強い処分ができるようにするという方向性自体は評価すべきだとしている。


■問われる運用方法

 「確約手続きの導入」に当たって、前出の阿部弁護士が懸念するのは、「実際の運用方法がどうなるか」という点だ。この点について消費者庁は、「確約手続きの法整備は、独占禁止法にならって行う」としている。
 阿部弁護士は、「独禁法で既に導入されている確約手続きでは、『確約計画の策定・認定』『行為、確約計画の内容等の公表』が行われる。『比較的軽微な行為』が対象で、入札談合や価格カルテルなどは対象外となっている」と話す。
 「比較的軽微な行為」の線引きがどのように行われるのか、という点が、阿部弁護士の一つ目の懸念だ。

(続きは、「日本流通産業新聞」1月26日号で)

記事は取材・執筆時の情報で、現在は異なる場合があります。

Page Topへ