〈変革するコールセンター〉 CX向上の戦略拠点に/VOC集約、支援領域は拡大(2022年7月21日号)

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■「導入」から「定着」に

 コロナ禍以降、コールセンター運用で生じた最大の変化は、「在宅業務の拡大」だろう。働き方改革の意味合いで業界全体の課題として長らく上がっていた在宅業務の導入推進は、コロナ禍という外的要因によって急速に進んだ。
 業界団体の日本コールセンター協会(CCAJ)が会員企業向けに行った調査結果によると、在宅スタッフの採用に対する実績と意識は19年度と20年度を境に別表の通り大きく変わっている。
 「初期投資の捻出やセキュリティーのリスクから、なかなか浸透していなかった業務在宅化だが、コロナ禍以降は外資系のクライアントを中心に導入が進んでいった。安定した運用まで一定のコストは要したが事業継続や雇用創出など、あらゆる面でプラスに作用している」(某コールセンター事業者)と話す。
 業界大手を中心にコロナ禍以降、2年超の運用を経て、恒久的に在宅業務を採用する動きが広がっている。ベルシステム24ホールディングス(HD)が、23年2月までに4000席の業務在宅化を計画として打ち出すなど、事業の主要数値目標の一つに業務在宅化の推進を掲げる企業も少なくない。
 「事業計画の見直しやシステムの整備が進み、規模と質を底上げする段階へと移行している。仮にコロナが収束しても、この流れが変わることはないだろう」と前述の事業者は話す。
 CCAJが受ける在宅業務に関する相談内容も、環境構築など導入の分野から、効率化やスタッフのケアなど運用面での事柄に変わってきているという。


■在宅化が雇用を創出

 コールセンター企業が業務在宅化を推進する背景には、人材雇用を促進する狙いもある。
 ビーウィズでは自社開発のクラウド型PBX「Omnia LINK(オムニアリンク)」を軸に、採用・研修から業務に至るまでのフルリモート化を推進している。
 「コロナ禍において、在宅勤務者は全国で1000人規模まで急速に拡大した」(ビーウィズ・森本宏一社長)と言う。
 場所や時間に縛られない多様な雇用環境の創出により、慢性的な課題であった人材確保も好転しているという。
 「地域を限定し『10人の中から1人』を採用するのと、リモート勤務前提で『1000人の中から1人』を採用するのでは、人材活用の方針が根本的に変わってくる。ロケーションフリー採用を推進し、業界の働き方そのものに変革を与えていく」(同)と話す。
 在宅化という新たな選択肢を得たことで、従来のコールセンター拠点の運用方式にも変化が生じている。
 キューアンドエー(本社東京都)は2月、「南三陸サテライトオペレーションセンター(南三陸センター)」を宮城・本吉郡に開設した。東日本大震災の復興で利用されていた宿泊施設を再活用し、リモートワークや拠点分散といった次世代のセンター運用モデルを見据えた新拠点だ。
 同社は従来、オペレーター採用や運用の関係から200席以上の大規模コールセンターを都市部で運用してきた。席数約30席の「南三陸センター」は、従来の方式と異なり、電話応対をするオペレーターのみが勤務するサテライトセンターだ。業務の運用管理者を別拠点に配置し、勤務するオペレーターに対して遠隔でマネジメントを行う。

(続きは、「日本流通産業新聞」7月21日号で)

サテライトオフィスによる拠点分散も進む(写真はキューアンドエーの「南三陸サテライトオペレーションセンター」)

サテライトオフィスによる拠点分散も進む(写真はキューアンドエーの「南三陸サテライトオペレーションセンター」)

記事は取材・執筆時の情報で、現在は異なる場合があります。

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