【インタビュー】楽天市場/事業地域活性グループ 塩沢友孝マネージャー/「地域活性グループ」立ち上げ、地方EC事業者を支援

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塩沢友孝 マネージャー

塩沢友孝 マネージャー

楽天は13年4月に「地域活性グループ」を立ち上げ、自治体にECを活用した事業者の支援を呼び掛けてきた。各自治体に出向いてEC支援の重要性を説き、楽天市場で売り上げを伸ばす地方のEC事業者を増やしている。地方への移住を希望する求職者にEC分野のキャリアアップや、地方の生産者と出店者との商談会も提供し、出店の促進にとどまらない活動も始めている。楽天市場事業地域活性グループ・塩沢友孝マネージャーに、取り組みの成果と今後の計画について聞いた。

特産品でなくても人気店舗に
ー今年は千葉と金沢に支社を開設し、全国の支社は17カ所となりました。支社を増やす理由は。
 ネットの会社なので、東京本社からメールや電話でサポートすればいいと思われるかもしれませんが、楽天には地方の中小企業と一緒に膝を突き合わせてともに売り上げを拡大してきたいという理念があります。特に金沢は北陸新幹線が開通したことで、観光が盛り上がっています。北陸の拠点となっていた支社を閉じた企業もあるようですが、当社は北陸新幹線開通直前に金沢支社を開設し、金沢市長などに暖かく迎えていただきました。

ー地方自治体にはECを促進するためにどのように声を掛けていますか。
 例えば金沢は、海産物や金箔などのイメージがありますが、ECの世界ではこうした有名な特産品だけを販売する必要はないと説明しています。空港や駅にお土産店を置いている地方企業がECで観光客にリピートしてもらうことも大事です。また、インテリアやファッションなど、その土地の特産品でなくてもECで人気を集める店舗はたくさんあります。自治体は後者の存在を知って「ECは大事だ」と理解し、地域活性のために一緒に取り組んでくれます。当社は自治体と事業者の懸け橋となってEC市場を盛り上げ、地方の雇用拡大にも貢献していきたいと考えています。

ー地方の雇用拡大にはどんな取り組みがありますか。
 新しい取り組みとして、Iターン、Uターンの移住者と楽天市場の出店者をマッチングさせることも始めています。求職者をいきなりマッチングさせるのではなく、当社がECの教育と人材育成をします。今後はこういった取り組みが大事になってくると思います。当社は99年に「楽天大学」を立ち上げ、ECのノウハウを出店者に提供してきました。この経験を地域活性にも役立てたいと考えています。「地元で起業する」「地元でEC事業に就く」というニーズはあると思いますし、それが当社の考える地方創生の本質です。こうした思いを理解し、「一緒にがんばろう」という自治体が増えているのだと思います。

ーECによる地域活性に取り組む自治体の事例は。
 当社が本格的に地方創生に取り組もうと思ったきっかけは岐阜県です。岐阜県の商工政策課は地代が安いことや、地域外から収入を得られるメリットを挙げて県内事業者のECを促進しています。実際に岐阜県内のEC事業者の合計売り上げのうち、95%が県外からの注文だったそうです。岐阜県は特産品をいかに全国に販売するかを考えていましたが、県内にはファッションやベーグルの人気店舗があることが分かり、「特産品だけでなく、ECでがんばろうとする県内全部の事業者を支援することが自治体の役目だ」と意識転換したそうです。岐阜県は「ネットショップ支援と県産品の振興は切り離し、県産品に限定せず、ネットであらゆるものを販売し、利益を上げてもらうことが産業振興で重要です」と県内事業者に話しています。

(続きは日本ネット経済新聞 7月23日号で)

記事は取材・執筆時の情報で、現在は異なる場合があります。

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