【アスクル 執行役員 EC本部 本部長 温泉さおり氏】 <売上・利益とも過去最高を記録> BtoBとBtoCの融合でさらに成長加速(2023年8月10日号)

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 アスクルは23年5月期決算において売上高・利益とも過去最高を継続した。BtoB事業の成長加速と、日用品ECサイト「LOHACO(ロハコ)」の黒字化という二つの目標も達成している。25年5月期には、売上高5500億円という高い目標を掲げている。BtoB事業のさらなる成長と、黒字化したBtoC事業の再成長の見通しについて、執行役員EC本部本部長・温泉さおり氏に聞いた。

■黒字化の影に地道な努力

 ─「LOHACO」を黒字化できた要因は。
 売上総利益の面では、値上げを含めた価格の見直し、サプライヤーとの地道な交渉、ポイント施策の絞り込みなどを進めた。
 物流面では、置き配を促進している。デフォルトを置き配に設定し、強めに置き配を推奨するUIに変えた。これらの取り組みにより、置き配の比率は上がっている。置き配であればBtoBの配送ネットワークでBtoCの商品を運ぶ混合輸送がしやすくなり、配送費の低減につながる。
 1箱当たりの単価の上昇にも取り組んでいる。送料が無料になる配送バーを変更したり、まとめ買いでお得になる販促を実施したりすることで、単価は上昇している。単価が上がることで配送効率が高まっている。
 固定費の削減にも注力した。BtoBとBtoCの事業本部を統合し、重複している業務を減らし、業務の効率化や人員のスリム化を図った。
 ─BtoBとBtoCの事業本部の統合による各事業でのシナジーは。
 今年3月から事業本部を統合している。統合によってコスト削減できただけではなく、シナジー効果も出ている。例えば、それぞれの事業本部に集客チームがあったが、統合により同じ業務は1人の担当者に集約するなど効率化を図っている。さらにBtoB事業は外部からの集客に注力しており、BtoC事業はモールでのポイント販促やメーカー販促に長けている。それぞれが注力してきた部分のノウハウを共有し、より効率的な販促を実施できるようになっている。
 ─今期(24年5月期)のBtoC事業は、第4四半期から前期を上回る計画だ。
 「ヤフーショッピング」のキャンペーン変更による影響により、第3四半期までは前期を超えるのは難しそうだが、一巡してくる第4四半期からは前期の水準を超えることができるだろう。商品の拡充の準備もしており、販促も徐々に強化していく。第4四半期から再成長を図り、来期以降もその流れを継続していきたい。来期からBtoC事業も会社の伸長率くらいの成長を実現していきたいと思う。
 ─Zホールディングスとのシナジーに期待することは。
 今年10月以降のID統合が鍵を握ると思う。LINEユーザーにもリーチできる可能性が出てくる。まだZホールディングスとの取り組みで決まっているものはないが、顧客基盤が増えるために何かできることを期待している。


■オープン化が成長に貢献

 ─BtoB事業の成長要因は。
 数年間から計画している新サイトのリニューアル計画により、まず中堅・大企業向けの「ソロエルアリーナ」の新サイトを開設した。新サイトはオープン化といっているが、検索エンジンからお客さまが流入できるように構造を変えている。検索からの流入に加え、広告費も大きく投下しており、売り上げ拡大に貢献している。

(続きは、「日本ネット経済新聞」8月10日号で)

記事は取材・執筆時の情報で、現在は異なる場合があります。

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