【エニグモ 金田洋一取締役兼コーポレートオペレーション本部長、谷口亮経営企画室長】 〈「BUYMA」会員数は800万人に〉”特化型市場”で世界をつなぐ

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 エニグモが運営する海外通販サイト「BUYMA(バイマ)」が好調だ。海外在住のユーザーが出品するファッションアイテムを販売し専門性の高い独自市場を形成。05年の事業開始後、会員数は800万人、取り扱いブランド数は1万4000種類まで拡大した。コロナ禍で海外への行き来が制限される中、日本と世界各国をつなぐ特化型マーケットプレイスとしてその存在感を高めている。近年は自社ブランドの立ち上げや新興企業との協業など、「BUYMA」を軸に事業展開の幅を広げている。成長を続けるエニグモの管理部門を統括する金田洋一取締役兼コーポレートオペレーション本部長と谷口亮経営企画室長に、今年の取り組みや今後の戦略について聞いた。

■自粛の受皿で利用層が拡大

 ─「BUYMA」が好調な要因は。
 谷口 大きな要因として全国規模での外出自粛によって、アパレル市場全体でECの利用率が高まったことが挙げられます。数あるアパレルECの中でも、世界各国のブランド商品を取り扱う「BUYMA」は、特にその変化の影響を大きく受けています。
 今期前半(20年2―7月期)においては、会員数の伸びとともに、新規会員によるラグジュアリーブランドの購入が目立ちました。今まで海外旅行先のブランドショップや国内の百貨店などで買い物をしていた層が、新たに「BUYMA」を利用した結果だと考えています。
 ─ユーザー層や利用状況も大きく変わったということですか。
 谷口 劇的な変化ではなく、着実な底上げが行われたという印象です。緊急事態宣言下だった4月度は、サイトの閲覧数が急激に上昇しましたが売り上げ自体は伸び悩みました。その後、社会全体がウィズコロナへと意識が変化していく中、ユーザーの消費マインド回復とともに売り上げも好転し、高水準で成長を続けている状況です。


■自社新ブランドで需要の隙間を補完

 ─8月には初の自社ブランド「ADDED(アデッド)」の展開を開始しました。
 金田 低価格かつ高品質で、「BUYMA」に出品されるブランド商品と組み合わせて相乗効果を発揮できるようなアイテムをコンセプトに開発しています。サービスの主力はあくまで出品者によるブランド商品。そこにわれわれのアイテムを加えることで、出品商品の新たな価値創出、ユーザー購買率やLTVの向上につなげられればと考えています。「BUYMA」のラインアップと需要の隙間を埋める存在として、今後シーズンごとに展開していく計画です。
 ─他に今期注力して取り組んでいる分野はありますか。
 谷口 「BUYMA」の最大の魅力である品ぞろえの拡充は、日々取り組んでいるミッションです。「パーソナルショッパー」と呼ばれる海外在住出品者による商品網が「BUYMA」の特徴ですが、近年は個人出品者に加え法人出品者との連携も強化しています。
 ワインの輸入販売を手掛けるリエゾンや、家具のサブスクリプションを手掛けるsubsclife(サブスクライフ)など、企業への出資も積極的に行っています。こうした企業との連携により「BUYMA」でのアパレル以外の取り扱いも日々拡大しています。ユーザーに非日常を提供する「特化型マーケットプレイス」というサービスの世界観と合致し、相乗効果の発揮が期待できる事業者とは今後も積極的に連携を取っていきたいです。
 金田 会社の「幹」である「BUYMA」に続く新たな幹として、オウンドメディアやトラベル事業といった事業も進めています。各事業に共通する部分は当社が「BUYMA」で培ってきたノウハウや世界観を活用できるものということです。誰かの損で誰かが得をするという構造はサービスとして決して長続きしません。サービスを使うことで関わる全員が何かしらの利益を受けられるという前提のもと、各サービスを展開しています。


■専門性をより高め、唯一無二の市場へ

 ─今後「BUYMA」が目指すプラットフォーム像を教えてください。
 金田 10年以上の歳月をかけ専門性の高い唯一無二のマーケットを構築してきました。サービスの質をさらに磨き、プラットフォームとしての質を高めていく。地道な行為ですが、その繰り返しが重要だと考えています。サービスの拡充とともに、ワインや家具など提供できるスペシャルティーの幅を広げていくことが当面の目標であり課題です。
 谷口 ECサイトが乱立する中、「BUYMA」だからこそ創出できる価値を追求していきます。現地情報の発信やアパレル人材の交流など、多くの人が関わるCtoCサイトの特性を生かし、時代に求められるサービスを今後も提供していきたいです。



〈プロフィール〉

金田洋一(かねだ・よういち)氏=写真左
 流通業の財務経理責任者を経て、2010年にエニグモ入社。現在は取締役兼コーポレートオペレーション本部長として、エニグモの全ての管理業務を管掌。強固な内部管理体制を構築し、高成長が続く「BUYMA」を支える。

谷口亮(たにぐち・りょう)氏=写真右
 コンサルティングファーム、証券会社の投資銀行部門を経て、2019年にエニグモ入社。経営企画室長として、M&A・IR・資本政策を担当。資本市場での経験を生かし、エニグモの企業価値向上を推進する。

記事は取材・執筆時の情報で、現在は異なる場合があります。

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