〈新代表が語った「Qoo10」の勝算〉ジオシス ヘンリー・チュン代表/3つの投資で急成長を実現

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 eBay(イーベイ)がECモール「Qoo10(キューテン)」を運営するジオシス(本社東京都)を買収したことに伴い、イーベイ・コリアで統合営業本部長を務めていたヘンリー・チュン氏が今年5月、ジオシスの代表に就任した。チュン代表は5年後に「ヤフーショッピング」を抜き、ECモールで国内3番手を狙う方針を明らかにした。チュン代表は急成長を実現するため、三つの投資を計画しているという。

 ─ジオシスの代表に就任した経緯は。

 本来は日本の市場を理解した者がカントリーマネージャーを務めるべきかもしれない。ただ、今回は独立した企業を買収したこともあり、イーベイのことをよく理解した者が来ることで、イーベイの文化を早期に定着させるという狙いがある。私はジオシスと同じ創業者が立ち上げた韓国の大手ECモール「Gmarket(ジーマーケット)」の責任者を任されていた経験があるので、「Qoo10」のビジネスモデルにもなじみがある。

 ─イーベイの傘下に入り、何が変わるのか。

 最初の試みとして9月から、販売手数料の体系を変える。現在の料金体系では、規模の大きい出店者は手数料が下がり、新しく入ってきた中小規模の出店者は比較的高い手数料を払わないといけなかった。この仕組みは不合理だと判断した。新しい料金体系はカテゴリーが基準となる。家電や生活必需品など価格競争が激しく、販売マージンが少ないジャンルは、販売手数料を6〜8%に設定した。価格競争が少ないファションなどのジャンルでは販売手数料を9〜10%に設定している。販売者の負担を軽減することに力を入れた。

 ─イーベイは日本市場に参入して撤退した経験がある。その経験からの教訓は。

 イーベイは01年に日本市場に参入したが、そのときは成功できず、02年に撤退せざるを得なかった。失敗の要因は日本市場の特殊性や日本のユーザーの特徴を十分理解せずに、米国のビジネスをそのまま持ってこようとしたことだと思う。今回はすでに日本市場で成功している会社を買収することで日本市場に参入した。「Qoo10」というブランドをそのまま使うのか、「イーベイ」を使うのかはまだ決めていない。韓国の場合、イーベイは買収した「Gmarket」のブランド名を変えなかった。今年の下半期にお客さまを対象に調査を行い、その結果によってブランド名を決めたいと思う。イーベイが持っている経験やテクノロジーはそのまま活用する予定だが、徹底的に日本市場に適した形でサービスを展開しようと考えている。


■テレビCMを検討

 ─日本市場に適した形とは。

 「Qoo10」はまだ規模も小さく、ブランドの認知度も低いが、独特な競争力を持っている。顧客の約9割が女性であり、10代〜30代の若い層が7割を占めている。主に購入する商品はトレンドに敏感なファンションやビューティー関連の商品だ。イーベイでは顧客の年代が高くなっていることが課題となっている。若い顧客をつかまえられていることは、大きな強みだと確信している。
 この顧客層の心をつかむために三つの大きな投資を計画している。まず認知度を高めるためにマーケティングに投資を行う。その方法の一つとしてテレビCMも検討している。10月以降にテレビや雑誌などで当社のブランドを目にするだろう。
 二つ目に取り組むのが商品の拡充だ。流行のファッションやビューティー、小物を取り扱っている中小事業者の出店を強化する。大手ECモールは規模の大きいブランドを優先し、中小事業者は取り残されている。さらにイーベイは、韓国と中国でパワフルな営業部隊を持っている。日本の若い女性がよりリーズナブルな価格で、トレンディーな商品を購入できる環境を構築したい。
 三つ目の投資先は、お客さまの体験を改善するための取り組みだ。当社は楽天のように大きなポイントプログラムを運用するつもりはない。アマゾンのように物流に大きな投資をするつもりもない。お客さまが買い物をするときに不便だと感じている点を改善する。データを活用し、商品選びの体験を改善したい。


■出店企業獲得を強化

 ─出店者数を増やすために営業組織を強化するのか。

 当社の組織の中で一番大きい組織が営業部隊で、約120人がいる。これ以外にもともとあったイーベイ・ジャパンで越境ECを支援している部隊がいる。年末までに二つの組織を統合する。ただ、これまでも組織の人数が足りなかったとは考えていない。買収する前は、営業は日々、売り上げを伸ばすことに集中していて、出店者の拡大まで至らなかった。7月に組織を再編し、営業の役割を出店者獲得に変更した。出店者向けには8月から、オフラインでトレーニングを実施しようと準備を進めている。大企業や大手ブランドとも提携していくが、中小事業者をサポートし、一緒に成長していくのが当社の目指す方向だ。
 さらに越境ECの支援体制も強化する。日本の事業者が越境ビジネスに大きな関心を持っていることを知っている。イーベイのグローバルネットワークを使って、販売の機会を提供したい。そのために言語と配送の二つの問題を解消するツールを提供する。自動翻訳サービスを提供し、イーベイのネットワークで自動的に商品を販売できるようにしたい。越境ECのための配送ネットワークも独自に開発する予定だ。韓国では海外の顧客に向けて、まとめて商品を転送するサービスを展開し、年間300億円の売り上げを上げている。海外の顧客のほとんどが日本の製品にも興味を持っている。日本でもこのビジネスは成功するだろう。
 越境ECも強化するが国内販売の方により集中していきたい。

記事は取材・執筆時の情報で、現在は異なる場合があります。

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