【〈新ブランド「TSBBQ」立ち上げ〉山谷産業 山谷武範社長】ユーザーの体験通じて商品を広げたい

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 キャンプ用品のECを展開する山谷産業(本社新潟県、山谷武範社長)は、楽天ショップ・オブ・ザ・イヤー2017を受賞した店舗「村の鍛冶屋」を運営している。PBのキャンプ用テントのペグ(杭)が大ヒットし、17年10月期のEC売上高は5億8000万円で過去最高を更新。18年10月期は6億4000万円を計画するなど成長を続けている。山谷社長に新たなブランド「TSBBQ」の立ち上げの経緯などを聞いた。

■モール系売上は9割

 ─1979年に創業しました。EC立ち上げまでの経緯について教えてください。

 今年で創業39年目を迎えました。私の父が創業し、もともとは漁師が使う「漁具(ぎょぐ)」を仕入れて漁港の組合員さんに販売していました。
 漁師の数が減少傾向にあったことから、2003年に卸売り事業から直販事業に大きく舵を切りました。現在はECなどの直販事業が全体売り上げの95%を占めており、漁具など漁師向けの販売は縮小しています。
 当初は「ヤフーオークション」に出品する形でECをスタートしました。その後、「ヤフーショッピング」「楽天市場」「アマゾン」に順次出店しました。モール系の売り上げが9割を占めています。

 ─1本300〜800円の「ペグ」がヒットしています。

 私が入社後、キャンプ用品の需要の高まりを感じ、13年ごろにPB商品の自社開発に着手しました。大手キャンプ用品メーカーが販売している商品を研究し、より使いやすいデザインの商品を開発することにしました。
 PBのキャンプ用テントのペグは17年4月〜18年3月までの1年間で40万本以上売れました。
 販売するきっかけは、当社の専務がアウトドア好きで、他社製品を使っていたのですが、使い勝手が良くないと話していました。もっと使いやすく、デザイン性のある製品を作ろうという話になり、私が社長に就任した1年後に販売を始めました。製造は、燕三条の職人にお願いして地元で作っています。
 当初は年間1万本売れればいいと思っていましたが、3カ月で1万本が売れ、ヒット商品になりました。

 ─ECサイトへの集客はどのような取り組みを行っていますか。

 ポイントを付与したり、当社のオリジナルステッカーをプレゼントしているだけで、ウェブ広告などは積極的に行っていません。
 自社サイトは昨年始めたばかりで、現在はアウトドア品を中心に計200品目を販売しています。自社サイトだけで販売している商品もあり、最近ではアニメとコラボレーションした商品の販売も始めて、他社との差別化につなげて集客しています。

 ─広告戦略を積極的に打ち出していないのはユニークに見えます。

 広告に頼ってしまうと一時的には売れるかもしれませんが、製品寿命が短くなってしまいがちです。本当に製品を長く使ってもらうためには、本当に気に入っていただけるような口コミを広げたいという思いがあります。
 当社では「ペグ」のヒットによるユーザーのレビューでサイトへの集客につながっている状況です。そのほか、キャンプ場などでユーザーが広げてくれました。ユーザーが製品を使ってみて、体験を通じて広がることで長く使っていただけると考えています。

 ─ECサイト以外で販路はありますか。

 一部はホームセンターなどでも販売しています。ただ、取引条件を厳しめに設定しており、それでも販売したいというところ以外は卸を行っていません。意外かもしれませんが、東京都内は取り扱っている店舗がありません。当社から積極的に販路を開拓することはしていません。

(続きは、「日本ネット経済新聞」7月12日号で)

記事は取材・執筆時の情報で、現在は異なる場合があります。

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