【大網 金坂瑞樹 代表取締役副社長】10年で売上高は5倍以上/オタクの聖地「アキバ」で認知拡大

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金坂瑞樹氏

金坂瑞樹氏

 フィギュアなどを実店舗とインターネットで販売する大網(本社東京都、金坂夏樹社長)は、明治時代に梱包資材問屋として創業して以来、業態を変えながら成長してきた。1999年には、ホビー用品のECを手掛ける「あみあみ事業部」を新設。07~16年の10年間で、同社の売上高は5倍以上成長した。東京・秋葉原に7月、3店目となる実店舗を開設。販売チャネル拡大による認知度向上や店舗での商品展開が新たな顧客層の獲得につながっている。17年5月期におけるEC売上高は前期比5%増の165億円。全社売上高の9割を占める「あみあみ事業部」を立ち上げた、金坂瑞樹副社長に成長の背景や今後の事業展開を聞いた。

■社内ベンチャーとして発足

 ーーーフィギュアなどのホビー用品ECを始めた経緯は。

 「あみあみ事業部」は社内ベンチャーという形で発足しました。当時はネットビジネスの黎明期で、リテラシーのある人だけがネットを使っていました。一般商材のECで成功しているケースは多くなかった中、目を付けたのがホビー用品でした。私自身、サブカルチャー全般に興味がありました。国内における輸入カードゲームの流行や、愛好家がカードの詳細や最新情報を当たり前のようにネットで調べていることを知っていたので、相性がいいだろうと考えました。
 輸入カードゲームの専門店として始め、アイドルやスポーツ選手のカード、お菓子のおまけなどニッチな領域の商品を展開しました。フィギュアのECを始めたのは04年ごろ。人の手で彩色するため、一つ2万円もするようなものだったフィギュアが、中国で大量生産できるようになり、価格は数分の一になりました。フィギュアのECに可能性を強く感じ、本格参入を果たしました。


■事業支える物流センター

 ーーー07~16年までの10年間で売上高が5倍以上に急成長している理由は。

 一つにはフィギュア通販への参入が早かったことが挙げられます。フィギュアをネットで販売する競合がいなかったので、他社が新規参入を試みるころにはメーカーとのつながりも含めて強豪店としての地位を築いていました。
 ホビー用品は安ければ良いわけではないですし、むしろ高ければそれだけ良いと感じる人もいます。ブランド価値を守るために商品価格を落としたくないメーカーとは、相談しながら限定特典を付けるなどして、メーカーと顧客の満足を実現してきました。過当競争に入らず、的確なマーチャンダイジングに注力することで勝ち残ってきました。
 二つ目は、事業の根底を支えた自社の物流センターです。まとめ買い需要への対応、海外発送用の梱包、複数の特典による複雑な同梱作業など外部に委託できないことが多くあります。中古品の買い取り・査定をセンター内で行うなど、事業の発展性にもつながりました。
 近年は「オタク文化」が国内外にサブカルチャーとして浸透し、若者を中心にライトユーザーや女性顧客が増えています。ヘビーユーザーは限定商品で囲い込みつつ、ライトユーザーや女性顧客を獲得する施策に取り組み中です。

(続きは、「日本ネット経済新聞」12月21日・28日合併号で)

(プロフィール)
金坂瑞樹(かねさか・みずき)氏
 1974年東京生まれ。早稲田大学商学部卒業後、大網に入社。99年にホビー・アニメ系グッズのECを手掛ける「あみあみ事業部」を設立した。フィギュア市場の急成長を追い風に、越境ECや秋葉原に実店舗を展開。16年代表取締役副社長に就任。前社長の次男で、現社長の弟。

記事は取材・執筆時の情報で、現在は異なる場合があります。

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