〈京阪グループ〉ビオ・マーケット 中西基之社長/オーガニックを前面に積極展開

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 京阪電気鉄道は10月1日付で、食品宅配のビオ・マーケット(本社大阪府)を子会社化し、食品宅配事業に乗り出した。新社長には、京阪電鉄の執行役員経営統括室経営戦略担当部長の中西基之氏が就任した。関信雄前社長は代表権のない取締役会長に就任した。京阪グループでは、オーガニックをコンセプトにした品ぞろえで、グループ内の百貨店や食品スーパーとの相乗効果を図っていく考えだ。今後の事業展開について中西基之社長に聞いた。

年商30億円超に

 ─ビオ・マーケットの事業内容を教えてください。
 ビオ・マーケットは1983年に設立した食品宅配企業です。「ビオ・マルシェの宅配」という名称で、100%有機JASの野菜をはじめ、500種類の有機加工食品などを販売しています。グループ会社を含めると、東京・埼玉・名古屋・大阪・京都・兵庫・広島・福岡などに約8000人の会員がいます。14年3月期の売上高は30億5300万円です。
 ─京阪電鉄がビオ・マーケットを買収するに至った経緯を教えてください。
 ビオ・マーケットは、会員制宅配事業と小売店などへの卸売りが主力事業です。卸先の一つとして約2年前から、京阪電鉄グループである京阪百貨店とビオ・マーケットの付き合いが始まりました。京阪百貨店の店頭の一角で、オーガニックの野菜を販売しています。現在も、百貨店内の食品売り場にオーガニックの野菜の販売コーナーを作って販売しています。
 1983年に創業し今年で31年を迎えました。創業者で現会長の関信雄氏の年齢が60代の中盤となり、将来の方向性について事業展開を考えたそうです。提携先として、さまざまな業種・業態の企業からアプローチがあったと聞いています。その中で、関会長は同じ大阪に本社を置き、オーガニックの展開に力を入れようとしていた京阪グループの傘下に入ることを決めました。ひと言でいうと「オーガニックに対する思いが同じだった」ということに尽きるでしょう。私は、10月1日付けでビオ・マーケットの社長に就任しました。これまで、京阪グループで、経営計画や都市計画に携わる機会が多くありました。リアルの店舗の経験は浅いですが、マーケティング、宣伝活動などを経験してきました。私の役割は、既存の社員が行ってきたマーケティングに加え、新たな戦略を打ち出すためのシナジーを生み出していくことだと考えています。
 ─京阪電鉄グループはここ数年、事業の多角化を進めているようですね。
 鉄道事業に加え、不動産業やホテル事業、ショッピングセンター運営管理(プロパティマネジメント)なども手掛けています。鉄道沿線の住民に対するサービスの拡充を図っています。人口の減少を見据える中で、子どもを持つ若年層にオーガニックを提供することが付加価値になると考えています。食品宅配事業を通じて、住みたい沿線作りと、京阪沿線の活性化を考えています。
 ─食品宅配市場は、ネットスーパーなどとの競争が激しくなっています。
 食品宅配業界のビジネスモデルは、安定期に入っており、ネットスーパーの新規参入に伴って競争が激しくなっています。現在、ビオ・マーケットは全体の売り上げの4割を卸売りが占めています。京阪グループだけではなく、さまざまな小売店への卸展開も行っています。長年に渡って、生産者と二人三脚で事業を行ってきました。京阪グループになったことで、取引先がさらに広がり、自社でも全国主要都市で食品宅配事業を強化していきます。
 ─食品宅配の新規会員はどのように開拓しているのですか。
 インターネット広告やリアルイベントによる集客が主力となっています。特に、ロハスなどをコンセプトにしたイベントに、マルシェという形で出店する形態での獲得効率がいいです。
 今夏は、天候不順の影響で野菜の店頭価格が高騰しました。その結果、ネットで有機野菜を求めるネットユーザーが増えました。ビオ・マーケットでは1500円といった比較的購入しやすい価格帯のお試し野菜セットの注文が集中したようです。しかし、2度目の購入の際に「会員になりませんか」とアプローチすると、購入しないケースが目立ちました。一方で、イベントなどで対面で説明をする会員は継続して購入してくれる人が多いようです。
 ─鉄道会社ならではの会員獲得手法はありますか。
 電車の車庫を開放するイベントなどで宅配の案内を行っています。イベントに来るのは、小さな子どもがいる世帯が多いため、当社の顧客ターゲットとなっています。


ネット通販にも注力

 ─食品宅配に加え、ネット通販も行っています。
 会員になる場合は、必ず営業マンが訪問して、契約の手続きを行っています。生協と同様に、自社配送員が配送し、次の注文の営業も担っています。週に1度の配送のため、追加注文としてネット通販が利用されています。今後はネット通販にも力を入れていく方針です。ただ、オーガニックを中心にしているため、商品点数がそれほど多くないのが現状です。スマホのユーザーも増えていることから、営業マンが訪問しなくても契約が完了できる仕組みの導入も来年早々には検討しています。お客さまの要望に応じたサービス展開を考えています。
 ─オムニチャネル展開についてはどんな計画を持っているのですか。
 京阪グループは、16年3月期を初年度とする3カ年の中期経営計画を策定しました。その中で京阪百貨店との連携も盛り込んでいます。
 百貨店の顧客は高齢化しています。デパ地下の商品を宅配してほしいというニーズもあります。宅配やネット通販の商品ラインナップにデパ地下商品を組み込むことも想定しています。10月からは、食品スーパーの中に、当社の売り場コーナーを設けました。さまざまな顧客接点を生かすことで、相乗効果を生み出していきたいと思います。
 ─関東など沿線がないところでブランド力も生かせますか。
 その当たりは割り切っているところです。オーガニックを前面に押し出した戦略を取っていき、関心の高い消費者を開拓することで、関東圏などの会員を増やしていきます。


〈プロフィール〉
なかにし・もとゆき氏
 1980年3月北海道大学法学部卒業、京阪電気鉄道入社。12年6月から京阪カード代表取締役社長、同年6月京阪電気鉄道執行役員、同年6月経営統括室副室長、13年経営統括室経営戦略担当(広報・CSR)・事業推進担当(マーケティング・宣伝)を兼任。大阪府出身、56歳。


〈記者雑感〉
 ネットスーパーやECの台頭を受け、食品宅配の老舗企業は業績が伸び悩んでいる。ビオ・マーケットも関西地区では順調に会員を伸ばしているが、関東では伸び悩んでいるようだ。ビオ・マーケットは今後、京阪グループとして百貨店、食品スーパーといったチャネルを有効に活用できるかがポイントになりそうだ。オムニチャネルの本格化に向けた京阪グループの今後の展開に期待したい。

記事は取材・執筆時の情報で、現在は異なる場合があります。

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