【楽天 楽天市場事業 城戸幸一郎 執行役員】変革の時期に 海外進出の成功事例が増加/出店者、ユーザーと一緒に次のステージへ

城戸幸一郎執行役員

楽天市場が変革を続けている。近年はスマートフォン(スマホ)対策と海外進出を強化。その結果、今年は楽天市場の流通総額に占めるスマホ比率が過半数となる見通しで、海外販売に乗り出して売り上げを拡大する出店者の成功事例も増加している。楽天市場の海外販売サービス「楽天グローバルマーケット(RGM)」の流通総額はこの4年間で約7倍に成長している。海外販売を長らく統括し、国内の楽天市場の進化を率いる城戸幸一郎執行役員に、海外販売の成功の秘訣や楽天市場の今後について聞いた。

〈海外販売〉経営者の明確な目標がカギ

 ─現在、海外販売を行う店舗の割合は。
 楽天市場の約4万店舗中、約1万店舗が海外向けに販売しています。売り上げの多くを海外が占める店舗も珍しくなく、海外に挑戦したほとんどの店舗が売り上げを伸ばしている傾向にあります。
 ─海外の主要なマーケットは。
 中国、香港、米国だけで半数を超えています。エリアによっても人気の商品は異なりますが、どのエリアでも日本のブランドや日本の店舗は人気が高いと感じています。
 ─海外販売を始めていない店舗は何が障壁になっていますか。
 言語、物流、売れる商品が分からないといった悩みをよく聞きます。楽天では、店舗運営システム「RMS」と国際物流のEMSを連携させ、ボタン一つで伝票が印字できるようにするなど、スムーズに海外発送できるオペレーションを築いています。また、海外販売をするための手数料を海外売り上げの4%にして、シンプルな料金体系にしています。
 ─海外販売における楽天市場の強みは。
 まず、部署の中にマーケティングセクションがあり、例えば中国なら「ウィーチャット」のような現地のネットメディアの広告枠を買って、直接店舗にユーザーを流入させています。各国に人材が常駐しているので、他社にはまねのできない現地チャネルの開拓や交渉ができています。
 このほか、海外販売のサポート専門のセールスチームを置いています。中国でEC市場が盛り上がるシングルズデー(独身の日)に向けて販促したい店舗にはマーチャンダイジングからプロモーションまで一緒に企画します。担当制を敷いて、本格的に支援しています。
 ─海外販売に成功している店舗に特徴は。
 経営者の意識が明らかに違っていて、国内と海外でそれぞれの売り上げ目標をしっかり設定しています。言語対応できるように積極的に中国人を採用したり、売り出したいエリアを絞って人気の商品を仕入れたり、目標に向けた具体的な施策を取っています。
 ─海外の楽天市場に出店している事業者は大手が多いですか。
 大手に限らず、中小事業者もいます。RGMを通じた海外販売が軌道に乗ったので直接出店していくケースもよくあります。RGMの海外販売は一つのステップという風に捉えてほしいです。日本にいながら海外のニーズを探り、マーケットからのニーズが確信に変われば海外に在庫を置いてマーケットプレイスに進出してほしいと思います。


〈国内の売り場〉基礎体力部分の流通を強化

 ─この1~2年間の楽天市場のキーワードは「スマホ」「海外」でした。次は何を見据えていますか。
 今もスーパーセールなどさまざまなキャンペーンを頻繁に開催していますが、シンプルで分かりやすいキャンペーンにしていくのが一つです。月に数回イベントがあると、ユーザーはいつ買うべきか分かりづらいもの。例えば、「楽天市場のアプリを使えば常にポイントアップ」というように、楽天とのエンゲージメントが強いユーザーにたくさんポイントを貯めたり使ったりしてもらい、ユーザーの行動を変えていきたいと思っています。
 ─今までイベントで集客していた店舗への影響は。
 基礎体力部分の流通と、企画によって押し上げられる流通の2種類があります。ベースの流通が強くなればセール時以外もしっかり売れるサイトになる。これは店舗にとってもメリットになると思います。
 ─その他のキーワードは。
 楽天市場という一つのドメイン、一つのブランドネームのもと、「何でもある楽天」というコンセプトで「Shopping is Entertainment」を掲げてきました。これをよりジャンルに特化した形で展開していこうという方向性を持っています。今の百貨店にしても、専門店の集合体に百貨店オリジナルのプライベートブランドがプラスされているように思います。それに近い形で「楽天ファッション」「楽天グルメ」など、ジャンルを前面に出しながら、ユーザーにより楽しんでもらえるサイト作りを目指していきます。
 ─具体的にはどういうイメージですか。
 楽天市場という一つの枠だけでなく、例えば「楽天ファッションアプリ」やグルメに特化したキュレーションサイト、家電に特化したイベントを企画するなど、ユーザーのさまざまなニーズを捉えて戦略転換を図っていきます。


〈店舗育成〉店舗が店舗をコンサル

 ─店舗育成に関してはどのように取り組んでいきますか。
 「楽天ネーション」を発起していきます。今までECCが店舗をサポートしてきましたが、楽天の経験豊かな店舗がほかの店舗をコンサルティングするサービスを来年頭から始めます。コンサルティングを行う店舗は、三木谷(浩史)社長や役員陣が議論を重ね、まず5店舗を選びました。コンサルティングによって、月商1000万円の達成を目指していきます。コンサルタント側の店舗はエバンジェリスト(伝道師)として楽天から正式なタイトルを付けていきます。タイトルを得た店舗は、店舗のリーダーとして、海外販売などそのタイトルの分野の促進役となって楽天と一緒に取り組んでいただきます。
 ─コンサルティングを受けるにはどうすればいいのですか。
 申し込み後、面談の機会を設けます。同時に最大5店舗までをコンサルティングします。エバンジェリストは今後さらに増やしていく計画です。「楽天ネーション」の発足は「次のステージに進みましょう」というメッセージです。来年の新春カンファレンスで具体的な説明をしていきます。
 ─楽天市場は新しいステージに向かおうとしているように見えます。
 今は変革の時期です。三木谷社長も良い意味で「作り直していこう」「変革していこう」と話しています。海外販売もこれからさらに強化していきますし、国内も新たな進化を遂げようとしています。出店者とユーザーと一緒に、楽天市場を進化させていきたいと思っています。

記事は取材・執筆時の情報で、現在は異なる場合があります。

Page Topへ