【越境EC最前線】 コロナで受注30%拡大も/BEENOSは画期的サービス投入

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BEENOS・直井聖太社長

BEENOS・直井聖太社長

 コロナ禍で国内のEC市場は拡大しているが、越境ECの需要も拡大していることは意外と知られていない。海外でも巣ごもり消費は拡大しており、海外観光客によるインバウンド消費が、越境ECに流れてきている面もある。越境EC支援大手のBEENOS(ビーノス)が提供する代理購入サービス「Buyee(バイイー)」の4―6月における流通総額は、受注ベースで前年同期比34・1%増となった。BEENOSはこうした越境EC需要の高まりを受け、海外ECモールへの出品や越境ECサイトの構築からマーケティング、物流まで支援する画期的なサービスをリリースする予定だという。

 コロナ禍における越境ECの状況について、BEENOSの直井聖太社長は、「率直に言って状況は良い。新型コロナウイルス(コロナ)によって海外でもEC需要は確実に伸びている」と話す。
 BEENOSの海外転送サービスや購入代行サービスはグローバルに対応しており、特に東アジアに強みを持っている。だが、最近では北米やASEAN(アセアン)の顧客からの数字が伸びているという。コロナが沈静化してきた東アジアと比べ、まだまだロックダウンなどが続く欧米の需要が強いようだ。
 「売れている商品は国・地域によって若干異なる。米国向けにはホビー関連が強い。コロナでマニアが増えたようだ。動画サービスで日本のアニメを見る機会も増えている。巣ごもりで家にいる間に、日本のコンテンツに関心を持つ方が増えたり、もともと関心があった方が日本のECサイトで買い物したりする機会が増えたのだろう」(BEENOS・直井社長)と見ている。


■物流に選択肢が必須

 越境ECにおいては、国際スピード郵便(EMS)が一部サービスを停止するなど物流面で不安な面もある。
 BEENOSでは、「当社は独自の物流網を構築しているので、多少は影響があったものの、配送し続けることができた。競合サービスを使っていた方が当社のサービスに乗り換えたケースもあると思う。台湾や中国向けには独自の物流サービスを構築しただけでなく、EMS以外の配送手段を新たに開拓したりしている」(直井社長)と話す。
 EMSがサービスを停止したりした際に、アマゾンの越境EC物流も手掛けているECMSジャパンなどに依頼が殺到した。越境ECにおいても物流の選択肢はいくつか持っていた方がいいようだ。


■現地化で売れ行き順調

 卸・仕入れサイト「スーパーデリバリー」を運営するラクーンコマースは今年5月、台湾に特化したBtoBの越境ECサイト「日貨百貨」を開設した。スターフィールドが提供する越境ECカート「LaunchCart(ランチカート)」を基盤に、ローカライズしたサイトを構築している。
 同社はBtoBの越境ECサイトとして「SD export」を運営しており、134カ国に向けて販売している。特に成長性が高い台湾向けに物流や決済、言語、商品などの面で、現地のバイヤーが利用しやすい販売チャネルを設けた。開設から間もないが、売れ行きは順調だという。
 台湾に特化し、現地の言語で商品を紹介することで、安心感が増すとともにSEO対策でも効果が出ている。商品についても台湾でよく売れる商品を中心に見やすく掲載することで、顧客が迷わず購入できる。決済の現地化も購入率向上に効果的だという。
 越境ECに対応するだけでなく、特に売れ行きを見込める地域では、ローカライズを進めることも有効なようだ。


ワンストップで支援

 BEENOSは現在、海外転送サービスや購入代行サービスなど、越境EC支援のさまざまなサービスを提供している。さらに、ワンストップで越境ECのインフラを支援するサービスを投入するという。
 新たに「グローバルECプラットフォーム」を構築し、海外ECモールへの出品や越境ECサイトの構築を支援する。海外ECモールは、すでに連携している「Shopee(ショッピー)」だけでなく、中国系や米国系の有力モールとも連携する予定だ。
 越境ECの運営や物流などもワンストップで支援する。海外の環境に合わせたマーケティング支援サービスも提供する。
 「国内で売るための仕組みをプラットフォーム化し利用していただけるようにして、裏方のことは何も考えなくていいという環境を提供する。日本企業には商品やブランドの認知をどう高めるか、海外で売るための商品をどう作るかというだけを考えていただきたい」(直井社長)と話す。
 包括的にEC支援を依頼することもできれば、部分的に依頼することもできるようにするという。
 今後、インバウンド向けの販売促進に注力していた国内事業者も、越境EC対策に注力するようになるだろう。BEENOS以外にもさまざまな越境ECの新たな支援サービスが登場し、さらに海外に対して売りやすい環境になっていきそうだ。

ラクーンコマースが開設した台湾特化の「日貨百貨」

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記事は取材・執筆時の情報で、現在は異なる場合があります。

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