〈岐路に立つ千趣会〉/デジタルシフトも成果出せず

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ビジネスセンターへの移転後に売却する予定の大阪本社ビル

ビジネスセンターへの移転後に売却する予定の大阪本社ビル

 通販大手の千趣会が岐路に立っている。昨秋策定した今期を初年度とする中期経営計画(中計)は、わずか1年で修正を発表。代表取締役を含む期中の役員交代や、昨年に続く希望退職者の募集など構造改革を余儀なくされている。ECを主体としたデジタルシフトを打ち出したものの、具体的は成果が出ないまま、カタログ起点でのアナログ・デジタル連携集客を構築すると表明した。18年12月期の業績予想も下方修正しており、2期連続して100億円台の当期損失が見込まれている。

■通販売上減少
 11月22日に発表した今年10月度の月次データによると、千趣会の今期10カ月間における累計連結売上高は、前年同期間比10.0%減の928億3200万円。
 千趣会の主力事業である通販事業部門のインターネット経由(PC・携帯・スマホ・タブレット)による売上高は、10カ月間累計で同17.8%減となる450億5500万円となっている。
 通販事業の売り上げ減少に歯止めがかからないのは、通販事業における既存顧客の離脱が影響しているようだ。
 今期中間決算発表時に公表した通販事業の概要によると、今年度上半期の購入者数は184万6000人で、前年同期比39万8000人の減少。上半期における1件当たりの受注単価も、前年同期比522円減の9514円だった。
 これらのデータは継続会員の減少を物語っているが、その一因はカタログの縮小が挙げられよう。ページ数や紙の使用量は不明だが、カタログ発行部数は17年度で4740万部となっており、前年度から2840万部の減少となっている。
 千趣会から定期的に商品を購入していたある通販会員は、「カタログの頻度もそうだが、カタログ自体のページ数も薄くなっている」と指摘。今春から千趣会での継続購入をやめたという。
 カタログの発行部数削減やページ数の縮小による顧客接点の機会減少は、千趣会の想定以上に顧客離れを招いていると考えられる。


■続く在庫問題
 ここ数年、千趣会の業績を悪化させてきたのが在庫問題だ。在庫の増加に伴う評価損の計上や、在庫圧縮を目論んだシーズン中のバーゲン実施によって売上総利益の圧迫を余儀なくされている。
 今期における業績予想の修正も、「通信販売事業における在庫水準適正化を目的とした廃棄損計上、処分予定在庫の評価損計上およびバーゲン販売等により、売上総利益率は大幅に悪化している」(千趣会)と説明する。

(続きは、「日本ネット経済新聞」11月29日号で)

記事は取材・執筆時の情報で、現在は異なる場合があります。

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