<EC企業各社 17年末物流状況調査>遅配やカラ配達の事例も/入念な準備で配送トラブル避け

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年末配送の直前で委託先を振り分けた、チチカカの福袋

年末配送の直前で委託先を振り分けた、チチカカの福袋

 本紙は18年1月、主要なEC企業約30社を対象に、年末の出荷状況や、配送トラブルの有無などについての聞き取り調査を実施した。EC企業各社からは「遅配が増えた」「荷受け制限を急に言い渡された」といった、数々の悲鳴の声も聞かれた。背景には、配送会社の値上げや総量規制に端を発した一連の物流危機があるようだ。クリスマス用ギフトやおせちなど、年末年始に需要が集まる商品を扱う企業については、影響が特に大きかった。未配達のまま顧客に配達完了が伝えられる「カラ配達」など、さまざまなトラブルが起きていたようだ。一方で、物流の混乱が予想される年末に向けた、事前の準備を入念に進めた結果、トラブルを回避できたといった企業も少なからずあった。

■4割が「遅配あった」

 聞き取り調査は、おせちやカニなどの食品、家電、アパレルの福袋、化粧品、健康食品など、多様なジャンルの商品を扱うEC企業を対象に実施した。具体的な回答があった32社の内、45%にあたる15社から、「遅配が発生した」との回答があった。
 ただ、「遅配があった」と回答した企業の中には、「毎年末には遅配が発生する」と回答した企業も6社あった。
 靴のECのA社は、「12月初旬から遅配が多く見受けられるようになった。暮れと年明けのピーク時には、荷物が実際には届いていないのに、配送会社のウェブ上の配送ステータスは『持ち帰り・再配達』の状態が続く、といったこともあった」(広報)と話す。
 チョコレートECのチョコレートデザイン(本社神奈川県)では毎年、楽天スーパーセールや歳暮の影響で、12月1カ月間の出荷量が通常月の3~4倍にもなるという。17年中には配送会社から集荷時間の前倒しなどの条件の変更があったという。「年末には遅配が十数件発生した。そのうち、数件は苦情が、当社に寄せられた」(EC事業部リーダー)と言う。
 

■年末のトラブル予測し回避

 「遅配はなかった」と話す企業の中には、「配送会社と打ち合わせを重ね、年末に向けて準備した」(食文化)や、「年末を迎える前に複数の配送会社と契約をした」(スカイネット)など、事前の備えを行った事業者が多かった。
 お取り寄せECの食文化(本社東京都)では、毎年12月に、1カ月間の注文が、通常月の5倍になるという。同社は年末の出荷作業についての綿密な打ち合わせを、配送会社との間で行っていたという。「12月中は、一日ごとの出荷個数をあらかじめ取り決め、配送会社の負担を軽減できるようにした」(マーケティング部マネージャー)としている。
 家具や寝具のECのエムール(本社東京都)では家族の帰省が増える年末に、布団の需要が増加するという。17年末は16年末にも増して、配送会社による、布団などの大型商品の荷受け制限が厳しかったという。ただ、同社の場合、遅配などが発生する可能性について11月からユーザーに告知していたため、大きな混乱は起きなかったとしている。
 年末の販売がスタートする直前に、配送会社を振り分けざるを得なくなったが、トラブルは回避できたという企業もあった。アパレルや雑貨を販売するチチカカ(本社神奈川県)では年末配送のスタート直前に、配送を委託する日本郵便から福袋の荷受けを半分に制限された。やむを得ず急きょ西濃運輸に荷受けを依頼することになったという。急な対応となったが、1月1日に配達する福袋に遅配などは発生しなかったという。
 

■自社物流と外部委託で効率を

 遅配あり・なしの企業それぞれに、今後取り組むべき物流施策の改善について聞いたところ、「商品価格や送料の値上げを行った・行う予定」と回答した企業が32社中8社に上った。「消費者の理解も進んでいる。現状送料の値上げがクレームや売り上げ減少にはつながっていない」(家電EC企業)と言う。
 一方で、「商品価格や送料の値上げについては様子を見て検討するが、物流の効率化をして配送コストを減少させる」という企業が全体の75%(24社)を占めた。
 「物流機器の導入によるコスト削減を検討中」(大手化粧品通販企業)や「出荷作業の一部を機械化して補う」(大網)といった、自社の物流体制の強化を課題として挙げる声も聞かれた。一方で、「AmazonのFBAを利用することで少ないながら利益を確保する」(ゴルフ用品EC企業)や「引き続き楽天物流やFBAを利用することで、自社の物流負担を減らしていきたい」(ギフト菓子EC企業)といった声もあった。

記事は取材・執筆時の情報で、現在は異なる場合があります。

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