スタートトゥデイは10月19日、ファションメディア「IQON(アイコン)」を運営するVASILY(ヴァシリー、本社東京都、金山裕樹社長)の全株式を取得し、完全子会社化すると発表した。買収金額や時期は非公表。ヴァシリーが持つAI(人工知能)技術を自社のサービスに生かしたい考えだ。
スタートトゥデイは2月、ICT(情報通信技術)やIoT(モノのインターネット)を活用したプライベートブランド(PB=自主企画)商品を開発すると発表した。商品の具体的な内容については明らかにしていないが、PB商品で取得したデータをさらなる商品開発やサービスに生かす構想がある。
ヴァシリーが10年4月にリリースした「アイコン」は、ユーザーが自由にコーディネートを作成できる機能などを備えた、ユーザー参加型ファッションメディアの先駆けだった。これまでに250万件以上のコーディネートが投稿されている。
17年3月には、SNSの投稿画像から商品を検索・購入できるサービス「SNAP(スナップ)」を提供。AIを駆使した機械学習・画像認識の技術を活用したサービスだった。
スタートトゥデイのPB商品で収集したデータを生かす際に、ヴァシリーのAI技術を活用する狙いがある。共同で新たなサービスを開発する計画もあるという。
【当事者に聞く】ヴァシリー 金山裕樹社長/世界一のデータに引かれ
スタートトゥデイ(ST)からM&Aの打診があった。以前から(社長の)前澤さんとは交流を持っていたが、今回、PB事業の話を聞き、STがファッション分野では世界一強力なデータを持つ会社になるというのが見えた。それはアマゾンやグーグル、アップル、フェイスブックでも持つことができないデータだと思う。
STには画像解析や分析技術を評価してもらった。STも「WEAR(ウェア)」を提供し、ユーザーのコーディネートデータなどを収集している。そのような画像の解析技術は当社が一歩先を行っている。
当社が最終的にやりたいと思っていたサービスが、STと組めばすぐに実現できる。現時点で考えられる、ファッション分野のネットを駆使したベストなサービスを追求していく。
【識者に聞く】<ファッションECに精通>スタイラー 小関翼CEO/エンジニア確保が課題か
スタートトゥデイはエンジニアの確保が喫緊の課題だったのではないか。システムのリニューアルだけでなく、AIやアプリのUX(ユーザー体験)など、ヴァシリーが持つアクチュアル(実用的な)な技術は有用だろう。M&Aで良質なエンジニアを確保できるスタートトゥデイは今後、さらに影響力を増すと思う。
スタートトゥデイ/ヴァシリーを買収/AI技術の強化が狙い
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