出版社大手がコンテンツ力を武器に、新規顧客の獲得を進めている。集英社はECサイトの認知度向上を狙い、インフルエンサーに情報発信を促す取り組みを強化。ウェブコンテンツを基にしたカタログを創刊するなど新たなプロジェクトを推進している。宝島社は人気女優と共同開発した商品で話題を呼び込んでいるほか、新潮社は人気マンガのキャラクターグッズのネット販売を強化して、既存の読者とは異なる顧客層へのアプローチを始めている。
■「読者」から「発信者」へ
集英社は6月22日、運営するアパレルECサイト「フラッグショップ」の開設10周年を記念したイベントを都内で開催し、インフルエンサーが300人以上参加した。カナダの人気歌手のカーリー・レイ・ジェプセンをゲストに招待。海外セレブのファッションやライフスタイルを好みそうなインフルエンサーに参加を呼び掛けたという。
こうしたインフルエンサーは集英社の既存顧客や雑誌読者とは異なる層。「今までは読者という枠から抜け出せなかったが、そこを一歩踏み出して情報を発信していきたい」(ブランド事業部ダイレクトマーケティング室)と話す。
テレビCMのようなコストの掛かる手法でなく、コストを極力抑えながら、今後も効果的にインフルエンサーを活用したいとしている。
■〝目利き〟の情報発信
集英社は、今年2月に「フラッグショップ」をリニューアルした。ゾゾタウンと同じやり方をしても厳しいと判断し、出版社ならではのコンテンツ力をウェブでも押し出すことにした。
「バイヤーズボイス」「バイヤーズセレクト」など三つのコンテンツを新たにサイトに追加し、商品やトレンドに詳しい〝目利き〟による情報発信を強めている。
今年から、ウェブメディアをもとに制作したカタログの発行を開始した。主力カタログ「フラッグショップマガジン」の別冊の位置付けで、6月23日には3号目となる「ザ・デニムブック」を発行した。
従来、雑誌の内容と関連付ける形でカタログを制作してきたが、「今後はシーン別や素材別などあらゆる切り口で、ウェブ上や紙媒体で展開していく」(同)と言う。さまざまなSNSでも写真を発信してアピールしていく。
■F1層獲得プロジェクト
集英社の「フラッグショップ」の主要な顧客層は30代後半から40代前半の女性。「顧客の年齢層がどんどん上がっており、F1層が希薄になっている」(同)と話す。
(続きは、「日本ネット経済新聞」6月29日号で)
出版社のEC/コンテンツ力で顧客開拓/「読者」にとらわれずアプローチ
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