食品EC・宅配/タテ 夕食キットの販売が活発に/オイシックスなど500万食突破

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オイシックスが限定出店した店舗外観

オイシックスが限定出店した店舗外観

 食品宅配・EC業界では、共働き世帯や子育て層の取り込みを狙う目的で、夕食(献立)キットの販売が活発化している。オイシックスが販売する「Kit Oisix」は3月末時点で500万食を突破。ウェブマーケティングのほか、リアル店舗や限定店舗などを設置することで顧客を拡大している。ヨシケイ開発では、「ラビュ」が570万食を突破した。〝時短〟をキーワードにした夕食(献立)キットの人気は年々高まっており、一部の雑誌では「ミールキット」とも名付けられて定着しつつある。ヨシケイやタイヘイが40年来販売してきたキット商品の市場が再び広がりをみせている。


 17年3月末で500万食を突破した「Kit Oisix」を販売するオイシックスは、新たな市場を開拓する目的で4月7日、JR大宮駅構内に「Oisix Market(オイシックス・マーケット)」=写真=を、6カ月の期間限定でオープンした。駅構内に出店するのは初めての試みだ。
 カット野菜や献立キットなどの販促につなげる。店舗とEC事業の連携で、顧客拡大を狙う。
 異業種との共同企画も積極的だ。4月10日から、カルビーやカジタク(本社東京都)と「母の日向けのギフトプレゼントキャンペーン」を共同展開しており、新たな顧客との接点を広げている。

■1麺で700万食見込む

 ヨシケイ開発(本社静岡県、林雅広社長)では、16年5月から販売している夕食キット「ラビュ」の累計販売数が10カ月で570万食(3月末)に達した。発売1周年となる5月末までに700万食の販売を見込み、年内に1000万食の達成を目指す。
 FC本部では、各地の働く女性向けイベントに出展。ホームセンターでの試食会のほか、インスタグラムやフェイスブックなどSNSを活用したプロモーションも実施した。3月には試食会イベントも初めて開催した。
 こうした取り組みが徐々に成果を出しており、「ラビュ」がきっかけにターゲットとしている35歳前後の顧客獲得が進んでいる。この成果を受け、ラヴュ以外では、時短メニューを現行の15分から10分に短縮した商品のリニューアルを計画する。
 らでぃっしゅぼーや(本社東京都、国枝俊成社長)が14年6月から販売している、時短調理キット「私が仕上げる10分キット」シリーズは、3月末時点で26万食の販売個数に到達した。
 利用者の44%が30代後半から40代となっている。ネット経由の注文は34%を占める。ウェブでは、動画を活用し、キットの活用方法を訴求している。
 大地を守る会(本社千葉県、藤田和芳社長)では、16年8月から販売しているキット商品「おやさいdeli kit―大地のめぐみでゆとりごはん―」が、3月末時点で6万9000食に達している。売上高は計画を24%上回る1億500万円で推移している。
 宅配とECの注文比率は、8対2と宅配が多く、既存会員からの利用が目立つ。
 6月からは冷凍キットも投入することでニーズに対応する。4月10日からは、既存会員でキットの利用のない人に向けてメールによる訴求も計画している。18年3月期に売上高2億3500万円の達成を計画している。
 ベンチャー系で順調に販売数を伸ばしているのが、ブレンド(本社東京都、田尾秀一社長)が提供しているレストランの料理をコンセプトにした定期宅配サービス「Tasty Table(テイスティテーブル)」だ。有名店のシェフが監修した料理キットの開発を増やしたり、レシピシートを同梱するサービスを開始。「スマホだけではなく、紙で欲しいというニーズに応えた」(田尾社長)と話す。
 4月からは、家族向けの4人用メニューも追加。1人1食あたり1500円という他社よりも高い価格設定だが、田尾社長は「〝時短〟という他社と同じ土俵では戦えない。料理を違う角度で提案することでもっと掘り起こせる」と自信を示す。今後はアプリの開発を進め、さらに利便性を高める。
 食品宅配企業では、ネットによる受注の割合がまだ高くない。スマホからの注文をしやすくする利便性向上が課題となっている。消費者の細かなニーズに応えられるかが今後の市場性を左右しそうだ。

記事は取材・執筆時の情報で、現在は異なる場合があります。

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