コロナ禍で急速に進んだOMO(オンラインとオフラインの融合)を、実店舗として実践する”OMO型店舗”の出店が加速している。21年にOMO型店舗第1号店を開設したアダストリアは今年4月24日、都内に旗艦店をオープンした。グループ全体のアセットを活用しつつ、外部ブランドと協業するオープン化も促進する方針だ。ワコールは4月に初のOMO型店舗を開業し、来店ハードルを下げてEC・実店舗の併用を狙う。EC事業の基盤が整ってきた今、利便性と体験価値を兼ね備えた場が次の飛躍につながる。アパレル各社の取り組みについてまとめる。(2面に関連記事)
OMO型店舗に明確な定義はないが、ブランドが既存の実店舗とECサイトをつなげるというよりも、”自社ECサイトをオフライン化する”という発想で展開している。
特徴は(1)ブランド横断型の品ぞろえ(2)ECサイトの商品を取り寄せるなどの連携(3)ECサイトのコンテンツと連動した見せ方(4)ブランドやサービスの体験価値の提供を重視─などだ。
事業者側のメリットとしては(1)在庫切れなどの機会損失を防ぎ、売り上げを最大化(2)データ収集や分析による顧客理解の深化(3)体験価値によるロイヤルティー向上─が挙げられる。
オンワードはOMO型店舗「オンワード・クローゼットセレクト(OCS)」を、24年度末時点で全国に166店舗展開している。OCSの24年度売上高の前年同期比は、OCSを除く実店舗と比較して23%上回ったという。
■OMO型の旗艦店
アダストリアグループでオンラインモール事業などを展開するアンドエスティは、OMO型店舗「and ST STORE(アンドエスティストア)」を、25年4月時点で全国に27店舗展開している。4月24日、旗艦店として「and ST TOKYO」を開業した。
オープンプラットフォーム化の推進やグローバル市場開拓などを目的とし、年間100万人の来店を目指すという。来場者のうち約半数を外国人観光客と見込んでおり、今後の海外展開の足がかりにしたい方針だ。
同社は30年までに会員数を現在の約1.3倍に当たる2600万人に伸ばしたい考えだ。24年2月に開設した浅草店は、通常店舗と比較して顧客獲得数やアクティブ率が良いという成果が出ていたことから、今回の旗艦店にも、会員の獲得や活性化に期待を寄せているようだ。
(続きは、「日本ネット経済新聞」5月1日・8日合併号で)
【アパレル大手】 〈”OMO型店舗”こぞって出店〉狙いは「会員登録」「LTV拡大」/アダストリアはリアルでもオープン化(2025年5月1日・8日合併号)
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