【中国向け越境ECに打撃】 処理水放出でKOLも取扱敬遠(2023年9月14日号)

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 福島第一原発の処理水海洋放出が、中国向けの越境ECや輸出に甚大な影響を与えている。水産物が禁輸となっているだけでなく、水産物由来の成分を含む健康食品の輸出も通関で止められているのが実情だ。水産物を配合していない、健康食品や化粧水の輸入が止められる事例も少なからず見受けられる状態となっている。現地では、KOLといった中国のインフルエンサーが、「日本製品」の取り扱いを敬遠する動きが常態化している。うまく現地に商品を届けられたとしても、現地での新規マーケティングがやりにくい状態になっている。中国最大のセールイベント「ダブルイレブン(11月11日)」を前に、国内の越境EC企業は、動向を注視している。

■対象は「日本製品」全般か

 中国による禁輸措置は、中国向けのさまざまな日本製品の流通に影響を与えているようだ。
 水産物由来の成分を含む健康食品の輸出が、税関で止められるケースも頻発している。健康食品の受託製造を行う中堅事業者からは「すでに数千万円レベルの影響が出ている」「水産物が含まれない商品も、税関で止まっている」といった声も聞く。
 化粧品の受託製造企業からは、「当社の卸先では、化粧品の輸出も止められていると聞いている。『日本の水』が使用されているからだそうだ」といった声も挙がっている。


■税関による対応の違い

 ただ、現在は混沌期のようで、必ずしも現場の対応は一様ではないようだ。ジェトロ上海事務所の高山博副所長も、「税関や製品、企業によっても通関できるかが異なるようだ」としている。
 中国EC市場に詳しい、Nint(ニント、本社東京都)のNint上海・経営戦略担当を務める堀井良威氏も、「禁輸の対象として、『水産物由来の健康食品』などが明示されているわけではない。より広い区分で、『水産品』と指定されているに過ぎない。禁輸対象の基準は、各地の税関の解釈によって異なると思われる。上海の税関で健康食品が輸入できなかったという話を聞いたが、全国一律に同じ基準ではない」(同)としている。


■税関を通過した商品も

 禁輸措置から2週間以上経過し、一時的に税関で止められていたが、その後通関できたという商品も出ている。中国向けの越境ECでサプリの販売を行う、ある事業者によると、「当社のサプリは、税関で止まっていたが、水産物素材を使用していなかったためか、約1週間で税関を通過できた」と言う。
 大手化粧品メーカーでも、化粧品が税関で一旦止められたが、今は問題なく通関できているそうだ。
 税関の対応にはばらつきがあり、今後も変動する可能性がある。


■「独身の日」迫る

 とは言え、「処理水問題」が、当面の越境EC市場に、甚大な影響を与えることは間違いなさそうだ。
 「水産物を使用した健康食品が一切通関できなくなった」と話す、ある大手健康食品メーカーは、

(続きは、「日本ネット経済新聞」9月14日号で)

記事は取材・執筆時の情報で、現在は異なる場合があります。

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