【物流の2024年問題】 「死活問題」と指摘する声も/新たな受け取り方を模索(2023年4月13日号)

  • 定期購読する
  • 業界データ購入
  • デジタル版で読む
ヤマダHDの「カーブサイドピックアップ」

ヤマダHDの「カーブサイドピックアップ」

 物流業界で、「2024年問題」への対応が喫緊の課題となっている。24年4月から、自動車の運転業務の時間外労働に、年960時間の上限規制が適用される。具体的な対応を行わなかった場合、24年度で約14%、30年度には約34%の荷物が運べなくなるといわれている。これがいわゆる2024年問題だ。物流コストの高騰や、物流サービスの低下につながる可能性がある。業界からは、「ECや物流の事業者にとって死活問題」と危ぶむ声も聞こえる。EC事業者もその対応方法を模索しているようだ。アマゾンジャパンでは、オートロック付きマンションで置き配が可能となるサービスを拡充し、再配達を減らす取り組みをすでに進めている。ヤマダホールディングスでは、ドライブスルーのような手軽さで車に乗りながら商品を受け取れる「カーブサイドピックアップ」に対応した店舗を増やし、ECの店舗受け取りの利便性を高めているようだ。

■24年4月から適用

 18年6月改正の「働き方改革関連法」に基づき、自動車の運転業務の時間外労働についても、24年4月より年960時間の上限規制が適用される。
 3月31日に開催された閣僚会議の資料によると、24年度には、輸送能力が約14%(4億トン相当)不足、30年度には約34%(9億トン相当)が不足するという試算があるという。地域別では特に、中国、九州、関東の不足が予想されているようだ。
 同会議では、物流問題の一つとして、「再配達」にも言及。22年10月時点の再配達率は11.8%にも及んでいるという。84.5%の事業者が物流に問題意識を持っているものの、実際に取り組みを行っているのは、54.3%にとどまっていることを問題として挙げていた。
 政府も手をこまねいているわけではない。物流の2024年問題への対応について岸田内閣総理大臣は同会議で、「荷主・物流事業者間などの商慣行の見直しと、物流の標準化やDX・GX(グリーントランスフォーメーション)などによる効率化の推進により、物流の生産性を向上するとともに、荷主企業や消費者の行動変容を促す仕組みの導入を進めるべく、抜本的・総合的な対応が必要」とし、「6月上旬をめどに、対策を『政策パッケージ』として取りまとめてほしい」と指示を出した。


■再配達の削減へ

 EC事業者も2024年問題への対応を進めている。アマゾンジャパンでは、オートロック付きマンションで置き配が可能となる「KeyforBusiness(キーフォービジネス)」のサービスを、21年3月に導入した。3月には三井不動産レジデンシャルリースと協業し、同社が運営管理する賃貸マンション約7万8000戸(22年12月末時点)への導入も発表した。
 アマゾンロジスティクス事業本部のアヴァニシュ・ナライン・シング本部長は、「22年末までに導入したマンションは5000戸以上。導入したマンションでは再配達を80%以上削減できている」と話す。EC業界全体においても、再配達削減の手段として、「置き配」や「宅配ボックス」が主流となる可能性がありそうだ。
 ヤマダホールディングスでは、「カーブサイドピックアップ」に対応した実店舗を増やし、受け取りの利便性を高める方針だという。

(続きは、「日本ネット経済新聞」4月13日号で)

記事は取材・執筆時の情報で、現在は異なる場合があります。

Page Topへ