【インシップ判決】 「医薬品誤認」否定で衝撃/表現範囲明確化、悪質事業者のメリットに?(2022年10月20日号)

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裁判の争点となったインシップの新聞広告

裁判の争点となったインシップの新聞広告

 消費者団体がインシップ(本社千葉県)に対して、ノコギリヤシサプリの広告の差し止めを求めていた訴訟で、岡山地裁がこのほど、消費者団体の訴えを棄却する判決を下したことから、業界に衝撃が走っている。原告である消費者団体が、「薬でもないのに薬効をうたっているのは景品表示法違反」などと主張していたのに対して、岡山地裁は、判決の中で「医薬品であるとの誤認を引き起こすおそれがあるということはできない」との判断を行った。インシップの広告表示が、景表法が禁じる優良誤認表示だとは認めなかった。控訴審以降で一審の判断が覆らなかった場合、行政の執行にも大きく影響を与える可能性がある。業界では、事業者側の勝訴を喜ぶ声が上がる一方で、景表法や薬機法に詳しい専門家からは、「これでは機能性表示食品にしなくても効果をうたえてしまう」「これが違法でないならば、不真面目な業者ほど得をすることになりかねない」といった意見も上がっている。

■ノコギリヤシの効果否定せず

 適格消費者団体である消費者ネットおかやま(事務局岡山県)は20年2月、インシップに対して、新聞広告の差し止めを求める訴訟を、岡山地裁で提起した。消費者ネットおかやまは、インシップのサプリ「ノコギリヤシエキス」の新聞広告の表示(写真)について、(1)医薬品として承認されていないにもかかわらず、「頻尿改善」という医薬品的な効能効果を表示していた(2)医薬品的な効果をうたっていなかったとしても、そもそもサプリに頻尿改善効果があるか疑わしい─といった論拠をもとに、インシップの広告が景表法違反だと主張。実質的に、この2点が主な争点となった。
 結果的に、岡山地裁は、(1)を認めなかった。岡山地裁は、「本件広告には、具体的な人の疾病名や特定の症状、それに対する具体的な治療効果等は記載されていない」と認定した。
 (2)の争点について、消費者ネットおかやまは「ノコギリヤシエキス」の効果を否定する独自の証拠を提出。これに対して、インシップは、「ノコギリヤシエキス」の効果を肯定する証拠を複数提出した。
 その結果、岡山地裁は、「医薬品でさえ、対象者の素因や症状の程度、試験の条件、評価方法等によって、治療効果がみられないとの試験結果が出ることはあり得る」「そのような場合であっても、直ちに治療効果がないものと評価することはできない」とし、「ノコギリヤシの頻尿改善効果を肯定する研究報告等も相当数みられるのであるから、少なくとも個人差のある一定程度の頻尿改善効果が認められる可能性は否定しきれない」と判断した。景表法上の優良誤認表示があるとは認めず、消費者ネットおかやまの訴えを棄却する判断を下した。
 消費者ネットおかやまは10月3日、広島高等裁判所へ控訴状を提出し、控訴した。


■広告の「攻め」のラインが明確に

 岡山地裁の判決を受け、薬機法や景表法に詳しい専門家の間でも、動揺が広がっている。

(続きは、「日本ネット経済新聞」10月20日号で)

記事は取材・執筆時の情報で、現在は異なる場合があります。

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