〈海産物EC事業者〉 カニの価格高騰が直撃/年末商戦対策「待ったなし」(2022年9月29日号)

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橘高友樹代表

橘高友樹代表

 近年の漁獲量の制限に加え、コロナ禍と国際的な政情不安により、カニの仕入れ価格高騰が加速している。海産物EC事業者にとって、年末商戦における”カニ”は最大の武器だが、その効力は制限されている。各社とも年末商戦対策は、「待ったなし」のスリリングな状況だ。増米商店(本社福井県、橘高友樹代表)は仕入れ量や販売価格を調整し、例年並みの売り上げ確保を狙う。森源商店(本社大阪府、水谷昱代表)は、新たな販路開拓とカニ以外の品ぞろえ拡充を同時に進めている。各社の対策や今後の戦略に迫った。

 カニの仕入れ価格は以前から、上昇傾向にある。生産国の漁獲量の制限や、世界的な需要拡大が影響しているという。
 さらに近年、コロナ禍での生産や輸送コストの上昇に加え、主要原産国であるロシアの政情不安による輸入制限などが仕入れ価格高騰に拍車をかけている。
 増米商店の橘高代表は、「21年はカニの仕入れ価格が1.5倍~2倍に高騰した」と振り返る。カニの仕入れ先や、種類によって状況は異なるようだが、仕入れ価格の高騰がカニを扱うEC事業者を直撃していることは間違いないようだ。
 海産物EC事業者にとって、最大の商戦期である年末商戦が迫っている。各社は刻一刻と変わる状況の中、対策を急いでいる。


■新種の仕入れ強化

 増米商店は以前から、「本ズワイガニ」や「タラバガニ」といった主要な種類以外の取り扱いを強化し、仕入れ難の対策をしてきた。日本ではあまりなじみのない「ミナミタラバガニ」や「ジョナクラブ」などの仕入れルートを開拓している。
 「『本ズワイガニ』と『ジョナクラブ』を比較すると、『ジョナクラブ』の方が仕入れ価格は3~4割ほど安い。『タラバガニ』と『ミナミタラバガニ』を比較しても、『ミナミタラバガニ』の方が仕入れ価格は3割ほど安い」(同)と話す。
 新しい種類のカニを仕入れる際、同社のスタッフが現地で味を確認し、品質を認めた商品のみを仕入れるようにしている。昨年の年末商戦において、「ミナミタラバガニ」や「ジョナクラブ」の販売は好調だったという。
 ただ、今年の年末商戦は状況が異なるようだ。
 「今冬は『ミナミタラバガニ』や『ジョナクラブ』の仕入れ量を減らす。両商品とも仕入れ価格が上がっているからだ。仕入れ価格が高騰した分は、販売価格に転嫁する。そのため、販売数は大きくは伸びないだろう。それでも一定数の注文数は確保できるとみている。販売数は減少するが、販売価格は上がるため、昨年同様の売り上げになると推定している」(同)と話す。


■セット商品を強化

 セット商品の開発を強化し、仕入れ価格高騰を乗り切ろうとする事業者もある。

(続きは、「日本ネット経済新聞」9月29日号で)

記事は取材・執筆時の情報で、現在は異なる場合があります。

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