【Eコマース業界地図「越境EC編」 特集】

 将来的なEC事業の成長を目指し、越境ECに参入するEC事業者は増えている。海外向けのECモールに出店し、越境ECに取り組む事業者が多かったが、最近は自社ECサイトで越境ECに取り組む事業者も増えてきた。さらに米国や中国といった大市場だけでなく、台湾や東南アジアなどを狙って販売を強化する事業者も散見されるようになった。国内向けとは勝手が違う越境ECに取り組むためにはパートナー選びが重要だ。「日本ネット経済新聞」と、EC業界のウェブメディア「eccLab」が共同で越境EC関連サービスをマップにまとめた。


■流れが変わった 

 昨年から越境EC市場の流れが変わった。近年の越境EC市場の盛り上がりは、中国からのインバウンド需要の拡大や中国政府の越境ECに関する規制緩和が背景にあった。
 ただ、昨年、中国の越境ECにおける関税制度の変更があり、既存のやり方では利益を出せなくなった事業者がいた。国際スピード郵便(EMS)の値上げも逆風となった。
 中国の大手越境ECモールの競争も激化している。
 一昨年まで越境ECに関して聞こえてきた威勢のいい話は、大手越境ECモールが実施するセールでの販売実績についてだった。こうした事業者が昨年は売り上げを落とし、元気を失ったことで越境EC市場全体が失速しているような印象も広まった。

■台湾ECの成功モデル

 中国向けの越境ECが変わり目を迎えたが、越境EC市場を俯瞰してみれば、長期的に拡大していくことは間違いない。アマゾンなど大手ECモールも越境ECを推進している。
 中国以外の国や地域に越境ECを展開する事業者が目立つようになってきた。特に最近は台湾に進出するケースが増えている。
 台湾向け越境ECを支援するサービスが増え、販売しやすい環境になっている。マーケティングにおいてもフェイスブックなどのSNS広告などが用いられており、日本のEC市場のノウハウを流用できる。
 リピート通販事業者に特化して台湾進出を支援する事業者もある。越境ECで軌道に乗ってから、現地法人を設立して収益化を目指すという成功モデルを提案することで多くのクライアントを獲得している。
 難易度が高い中国本土を避け、台湾で実績を作り、越境ECに弾みをつけようとする動きが広まっているのだろう。今後、こうした動きは東南アジアや他のエリアにも広がりそうだ。


《有力支援サービス紹介》

 越境ECを始めるための支援サービスが出そろってきた。サイト構築やモール、マーケティング、決済、物流、配送など、越境ECのためのソリューションは多岐にわたる。実績豊富な支援会社を味方につけることで越境ECの成功確率は高まるだろう。
 越境EC向けカートシステム「LiveCommerce(ライブコマース)」を提供するデジタルスタジオは、利用企業のマーケティング支援も注力している。海外のネット広告のノウハウも蓄積しており、利用店舗にアドバイスしたり、具体的に支援したりしている。
 さらに、越境ECモール「DiscoveryJapan(ディスカバリージャパン)」を開設し、出店者の販売支援を行っている。デジタルスタジオの板橋憲生社長は、「海外のマーケティングノウハウを持つ支援会社は少ない。経験のあるパートナーを見つけることで売り上げを伸ばせるだろう」と話す。

■システム以外も支援

 越境EC向けカートシステム「EC Baskech(イーシーバスケッチ)」を展開するバークレイグローバルコンサルティング&インターネットは、システム提供だけでなくサイト制作や運営代行まで支援するメニューを用意している。サイト開設から運営まで支援することで、利用店舗は手間をかけずに越境ECを開始できる。
 ECコンサルティングのペンシルは、台湾やシンガポールなどアジア向けの越境EC事業の支援に注力している。
 同社が提供するサイト分析ツール「スマートチーター」を活用することで、海外ユーザーの流入経路やサイト上で動きを解析。越境ECサイトの構築から、運営のアドバイスまで行っている。ネット広告活用などデジタルマーケティング全般を支援することも可能だという。

■BtoBで越境EC

 越境ECはBtoCに限った話ではない。国境を越えたBtoB ECによって売り上げ拡大を図る方法もある。
 卸サイト「SUPERDELIVERY(スーパーデリバリー)」を運営するラクーンは15年から、越境BtoBサービス「SD Export(エスディー・エクスポート)」を提供している。
 「エスディー・エクスポート」を利用すれば、商品情報を英語に自動翻訳したり、輸出のための配送手続きを代行してくれたりする。
 毎月1000店の海外小売店が登録しており、累計で100カ国の1万6000店舗と取引できるという。
 COUXUは、日本のサプライヤー企業と海外バイヤー企業をマッチングするプラットフォーム「セカイコネクト」を運営。世界で2000社以上のバイヤーが登録している。
 バイヤーの75%は東アジアや東南アジアの企業。COUXUが直接開拓したバイヤーが多いため、日本企業との取引に意欲的な企業が多いという。


《注目のアジア進出支援》

 アジア向け越境ECでは、中国で高いシェアを持つECモールに出店し、越境ECに取り組むのが現状では王道といえる。
 ただ、出店には高いハードルがある。出店審査はもちろん、店舗運営の環境を自社だけで整備するのは難しい。「天猫国際」と「JDワールドワイド」の2大モールへの出店支援を行う、いつも.など経験豊富な支援会社にサポートを依頼する必要がある。
 ハイラインズ(本社東京都、陳海波会長)も「天猫国際」への出店支援を行っている。国内のECサイトと天猫国際店の商品・在庫情報を連動させるサービスも提供している。

■中国向けサイトが手軽に

 中国や台湾などアジア向けに自社サイトで越境ECを展開する動きも活発化している。
 中国外のサーバーを活用して中国向けのサイトを構築すると、表示スピードが極端に遅くなる。
 この問題を解決するために、日本企業の多くは香港のサーバーを利用しているが、国内よりも費用が割高だったり、年間の利用料を先払いする必要があるなど、コスト負担がネックとなっていた。
 ソフトバンクグループのSBクラウドは、アリババグループのクラウドサービスを活用した低価格でサーバーを利用できるサービスを開始。中国向けのECサイトを手軽に開設できる環境が整ってきた。

■動画やSNSで集客

アジア向けのEC事業を成長させるために、日本企業が最も頭を悩ませるのは集客だ。
 アライドアーキテクツやエンパワーショップは、中国のインフルエンサーを活用した動画プロモーションサービスを提供している。
 アジア向け越境ECに精通しているスターフィールドの星野翔太社長は、「動画やSNSでのプロモーションが主流となっている。最近は国内のASPが海外向けのアフィリエイトも提供している。これから伸びるかもしれない」と指摘する。

■EMSより3割安い

 アジア向けの配送は日本郵便の国際スピード郵便(EMS)を利用するケースが多い。ただ昨年、EMSの料金が値上げされるなど、配送コストの負担は越境EC事業の課題となっている。
 中国資本のECMSジャパンはEMSよりも3割近く安い運賃の配送サービスを提供している。
 海外の大手EC事業者をクライアントに抱えており、1日数千個の荷物を中国などアジア地域に配送している。地域を絞り、効率的な配送システムを構築したことで安価な運賃を実現した。
 さらに、通関手続きをサポートするサービスもある。配送する国や地域のルールに基づき、正確に関税に対処することで荷主のコンプライアンスも支援している。

■盛り上がる台湾越境

 台湾向けの越境EC支援サービスも増えている。国内でも実績豊富なコンサルティング会社のいつも.やペンシルも進出支援を行う。ファインドスターグループのスタートアジアも台湾進出支援では実績を積み重ねている。
 ネット広告や通販事業のコンサルティングを行う売れるネット広告社は5月16日、単品リピート通販向けASPツール「売れるネット広告つくーる」において、初の海外展開対応となる台湾越境EC版の提供を開始した。
 国内版で効果を発揮している、ランディングページと申し込みフォームを一体にして離脱を防ぐ機能や、申し込み確認画面でクロスセルやアップセルを行う機能を搭載。台湾向けに独自の機能として、SMSやMMSでフォローできる機能を追加した。

記事は取材・執筆時の情報で、現在は異なる場合があります。

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