盛り上がる中国越境EC/通販企業の参入相次ぐ/14年の市場規模は1・5倍に

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日本から中国に向けた越境ECの市場規模が拡大している。経済産業省が発表した資料によると、14年の日本から中国への越境ECの市場規模は前年比55・4%増の6064億円にまで拡大した。経産省の推計では、中国への越境ECの市場規模は18年に、1兆3943億円にまで拡大するという。市場拡大を見越し、多くの通販企業が越境ECに取り組んでいるが、中国市場の攻略は簡単ではないという。越境ECを手掛けている通販企業の取り組みや、支援企業が語る攻略法を紹介する。

モール出店で進出
 中国への越境ECの市場規模拡大に伴い、越境ECに取り組む通販企業も増えている。
 15年3月には日用品ECの爽快ドラッグ(本社東京都、小森紀昭社長)と、化粧品ECのアイスタイルがそれぞれ、アリババグループが運営する越境ECモール「天猫国際」に出店した。爽快ドラッグは同6月、京東集団(ジンドン)グループが開設した、日本製品を中国人向けに販売するECサイト「京東全球購(JD Worldwide)日本館」にも出店している。
 「天猫国際」には、日本のサブカルチャー関連グッズのECを手掛けるTokyo Otaku Mode(トーキョーオタクモード、本社米国デラウェア州、亀井智英CEO)が同5月に出店。免税品店を展開するラオックスも同8月に出店している。
 イオンの通販子会社・イオンダイレクト(本社東京都、齊藤岳彦社長)は8月13日、中国・香港への越境ECサイト「新鮮直送」を開設した。香港の高級志向の消費者に、日本の果物や米、海産物などを販売する。香港向けの食品ECでは、オイシックスが先行しているが、ECモールに頼らずに独自に進出する取り組みも広まっている。
 総合ECサイト「リコメン堂」を運営するジェネレーションパスはタイの財閥グループから調達した資金を生かし、中国への越境ECに取り組む方針を発表した。
 中国EC市場への参入を成功させるため、調達資金を中国企業の買収や、中国企業との共同出資による新会社設立に充てる計画だ。伊藤忠商事などが中国・上海の経済特区で今夏にも始める越境ECプロジェクトにも参加するという。
 さらに、ジェネレーションパスは8月7日、ディノス・セシールと中国越境EC事業で業務提携したことを発表した。同社は自社で中国に進出するだけでなく、ディノス・セシールの進出支援も手掛けるという。

環境整備が背景

 中国への越境ECが活発化している背景には、参入しやすい環境が整ってきたことがある。
 これまで中国で物販を行うためには、中国企業と合弁による現地法人を設立する必要があった。多くの通販企業が中国進出に挑戦したが、合弁先との不和や、現地パートナーとのトラブルなどに見舞われ、撤退を余儀なくされるケースも多かった。
 日用品ECのケンコーコムは12年8月、中国の大手ドラッグストアチェーンLBXファーマシーチェーン(本社中国湖南省、謝子龍取締役会長)と合弁会社を設立し、中国市場で医薬品や漢方、健康食品、化粧品などを販売していた。ただ、13年5月に合弁会社の解散を発表。両社の事業の方向性にズレが生じたことが要因だったという。
 越境ECが注目されるきっかけは、中国最大のEC企業であるアリババグループが14年3月に開設した「天猫国際」だった。越境ECの場合、国内にいながら中国の消費者に向けて販売できる。しかも、中国国内で巨大なEC市場を形成しているアリババグループのプラットフォームにおいて、越境ECに取り組める魅力は大きかった。
 中国政府が規制緩和を行い、越境ECを促進していることも追い風になったという。上海などの経済特区に設けられた保税倉庫を活用することにより、短納期で迅速に中国の消費者に商品が届けられるようになった。
 環境が整備されたことにより、越境ECに取り組む先行企業は大きな成果を上げている。ケンコーコムやドラッグストアチェーンのキリン堂は咋年、中国のEC市場が最も盛り上がる11月11日の「独身の日セール」に参加し、日商1億円以上を売り上げたという。先行企業の実績が国内の通販企業の越境EC参入を後押ししたのだ。

(続きは「日本流通産業新聞」8月20日号で)

記事は取材・執筆時の情報で、現在は異なる場合があります。

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