〈モール物流〉 「運賃」「サービス」競争激化/宅配会社連携が勝負を新局面に(2021年10月7日号)

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21年3月に資本業務提携を発表した楽天の三木谷浩史社長(写真左)と日本郵政の増田寛也社長

21年3月に資本業務提携を発表した楽天の三木谷浩史社長(写真左)と日本郵政の増田寛也社長

 大手ECモールはコロナ禍に流通総額を大きく伸ばし、存在感を一層高めている。ECモールごとの競争が激化する中、その主戦場は物流サービスとなっている。モール物流ではアマゾンジャパン(アマゾン)が先行する中、楽天グループ(楽天)は日本郵便と、ヤフーはヤマト運輸と提携し、出店者に利用を促している。楽天やヤフーはアマゾンを意識した運賃を提示し、巻き返しを図る。ECモールは自社の物流サービスに出店者の在庫を抱えることで、確実かつ迅速に商品を顧客に届けることができる。コロナ禍でECに慣れた消費者の心を捉え続けるためにも、物流サービスは絶対に負けられない「一丁目一番地」だ。過熱するモール物流の現状を追うとともに、EC事業者のモール物流への対応の仕方などをまとめた。

■アマゾンが再びヤマトと

 アマゾンは10月5日、オンラインイベントでヤマト運輸と提携し、アマゾンのマーケットプレイスに出店する事業者に対し、自社出荷に適用できる特別運賃プランを提供すると発表した。出店者の自社出荷に対するサービスではあるものの、アマゾンとヤマト運輸が再び手を組んだことは、EC業界でも話題を集めた。
 ヤマト運輸はかつてアマゾンの配送を一手に引き受けていたが、サービス残業問題などにより、運賃値上げを求め、ここからアマゾンは独自に中小宅配会社を束ねたネットワークを構築し、ヤマト運輸に依存しない体制を整備していた。
 ヤマト運輸は物流サービスが手薄なヤフーと提携し、商品の保管から配送まで引き受けえる「フルフィルメントサービス」の提供を開始していた。
 楽天は日本郵便と提携し、ヤフーはヤマト運輸と組み、アマゾンは独自路線を進めるものという見方もあったが、ヤマト運輸との関係を再び深める動きに出たわけだ。


■価格競争は進む一方

 動きが目まぐるしいモール物流だが、価格やサービスの競争が激化しているのは間違いない。物流サービスではアマゾンが先行していたが、楽天が18年7月にワンデリバリー構想を打ち出し、物流サービスの本格展開を始めたことが、現在の物流競争の発端だ。
 楽天の物流サービス「楽天スーパーロジスティクス(RSL)」は、アマゾンの物流サービス「フルフィルメント・バイ・アマゾン(FBA)」に対抗した宅配運賃を提示し、受託拡大を進めている。
 ヤフーの親会社であるZホールディングスとヤマト運輸の親会社のヤマトホールディングスは20年3月、業務提携を締結。同6月から「フルフィルメントサービス」の提供を開始した。
 当初は業界関係者からも「受託企業が伸びていないのではないか」という声も聞こえてきていた。だが、今年4月に「フルフィルメントサービス」を刷新し、「FBA」「RSL」に対抗できる運賃を提示したことで、急速に受託企業を増やしているようだ。
 ある物流会社は、「知り合いが『フルフィルメントサービス』の下請けの物流会社にいるが、その倉庫からは1日2万件くらい出荷しているという。かなり出荷量も増えているようだ」と打ち明ける。
 先行するアマゾンに対抗するため、楽天やヤフーの物流費用の価格競争も進んでいる。
 ある通販会社は、「通販物流に強い3PLに見積もりを取ったが、1件当たりの出荷費用が約1000円だった。それがモールの物流だと240円。比較にならない」と話す。
 大手モールは物流費用を武器に、受託企業を増やしている。


■活用で「売れやすく」

 モールの物流サービスを活用する理由は、費用だけではない。

(続きは、「日本流通産業新聞」10月7日号で)

20年3月に提携発表会見で登壇したZホールディングスの川邊健太郎社長(写真左)とヤマトホールディングスの長尾裕社長

20年3月に提携発表会見で登壇したZホールディングスの川邊健太郎社長(写真左)とヤマトホールディングスの長尾裕社長

記事は取材・執筆時の情報で、現在は異なる場合があります。

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