〈コロナ禍の酒EC市場 競争激化〉 「酒ガチャ」「通い徳利」など独自施策で成長(2021年9月2日号)

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キリンホームタップの家庭用サーバーと工場直送のビール

キリンホームタップの家庭用サーバーと工場直送のビール

 コロナ禍の中、酒EC市場の競争は激化している。そんな中、キリンビールが提供するビール定期便は、今年8月時点で会員数が10万人を突破し、急拡大を続けている。リカー・イノベーション(本社東京都)では、ランダムに酒が届くサービス「酒ガチャ」を提供し、酒離れが進んでいるといわれる若年層の取り込みに成功している。オンラインイベントを実施することで女性ファンづくりに成功しているクラフトビール会社もあれば、現代版?通い徳利?を使った、循環型のエコロジーなコンセプトのサービス提供で、好調なスタートダッシュを切った日本酒会社もある。酒類通販企業にとって、「定期便の有効活用」「オンライン上の体験型の独自施策」「効果的なファンづくり」が、成長の可否を分ける分水嶺となっているようだ。

■酒類消費量が減少

 酒類の国内消費は中長期的に減少傾向にあるようだ。21年3月発表の国税庁課税部酒税課発行の「酒のしおり」によると、成人一人当たりの酒類販売(消費)量は、96年度の966万キロリットルをピークに減少傾向が続いており、19年度の消費量は前年度比1・4%減の813万キロリットルとなった。同資料には、「新型コロナウイルス感染症の拡大により、特に20年4月以降、国内では飲食店を中心に酒類消費が一段と減少しました」ともあり、飲酒人口の減少は、今後も引き続き、酒販業界の課題といえそうだ。


■キリンは定期会員が10万人を突破

 そんな中、キリンビールが提供する、キリン直販の定額サービス「Home Tap(ホームタップ)」は、好調に会員数を伸ばしている。同サービスでは、クリーミーな泡を生み出す、家庭専用の本格生ビールサーバーを提供。工場直送のビールを味わえるという、特別な体験が自宅で楽しめる点が好評なようだ。21年8月時点で、Home Tap事業は、21年末までの目標として掲げていた会員数10万人を突破。目標会員数を「15万人」に上方修正した。
 Home Tap事業を本格始動したのは17年6月。当時は、供給体制を越える応募が寄せられ、新規会員受け付けを一時終了したのだという。サービスの基盤が整ったため、今年3月に、新規会員受け付けを再開した。
 キリンビールでは、Home Tap事業について、「ストック型のビジネスであり、いかに早く会員のお客さまを増やせるかが重要」としている。現段階では、「収益が最大化される規模の臨界点を30万人」とみているという。今後も、30万人を目安に戦略的な先行投資を行っていくようだ。
 キリンビールの21年12月期の通期では、同社全体の広告費・販売促進費を前期比で104億円増額する予定だという。


■ヤッホーは定期の新規会員が50%増

 定期便に注力しているのは、クラフトビールECのヤッホーブルーイング(本社長野県)も同様だ。

(続きは、「日本流通産業新聞」9月2日号で)

記事は取材・執筆時の情報で、現在は異なる場合があります。

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