【主要カート13社に聞いた ECテックの潮流】 PayPay、チャットでスマホ強化/”ユニファイドコマースの再来”提唱する声も

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 ECサイトを運営する上で基盤となるのが、カートシステムだ。「MakeShop(メイクショップ)」「futureshop(フューチャーショップ)」「ebisumart(エビスマート)」「ecbeing(イーシービーイング)」など、主要カートシステムのベンダー13社に取材し、強化している機能やサービス、外部連携ツールなどを聞いた。スマホユーザーの獲得を意識し、スマホ決済サービス「PayPay(ペイペイ)」のオンライン決済を導入する動きが目立った。LINEのシナリオ配信でCRMを展開したり、チャットで注文情報を入力させる取り組みも多かった。さまざまなツールとの連携を進めるとともに、一部のベンダーは、カートシステムだけでなく、CRMシステムや顧客分析ツール、チャット購入フォームなどを自社で開発し、カートシステムと連携して効果的に活用できる体制を整えている。w2ソリューションの山田大樹CEOは、「変化の早いEC業界では、バラバラのシステムを組み合わせるよりも、統一されたシステムで戦う方が勝算がある。一昔前によく言われた『ユニファイド(統一された)コマース』が再来すると思う」と話し、自社でもさまざまな機能を独自に開発して、ワンストップで提供できる体制を整えている。

 スマホユーザーの拡大に合わせて、スマホ決済との連携を進めるカートシステムが多かった。SaaS型ECサイト構築プラットフォーム「futureshop」を提供するフューチャーショップ(本社大阪府、星野裕子社長)は5月、「PayPay(オンライン決済)」との連携を発表した。「PayPay」との連携は、カートシステム「aishipR(アイシップアール)」を提供するロックウェーブ(本社滋賀県、岩波裕之社長)とともに、カート業界では先行している。
 「当社の『PayPay』との連携では、購入後の金額変更にも対応している。『ヤフーショッピング』の店舗でも『PayPay』は使えるが、購入後の金額変更に対応していない。ここがネックになっている事業者は多かった。当社はその課題を解消した形で連携している」(執行役員 セールス・マーケティング部 統括マネージャー 安原貴之氏)と話す。
 「ebisumart」を提供しているインターファクトリー(本社東京都、蕪木登社長)は4月、フリマアプリ「メルカリ」のスマホ決済サービス「メルペイ(オンライン決済)」と標準連携すると発表した。ECベンダーでは最初の連携だった。
 大手ベンダーは、「PayPay」「メルペイ」だけでなく、「LINE Pay」との連携も進めている。注文時の決済手続きが容易な「Paidy(ペイディー)」などの後払い決済を入れるケースも増えている。スマホユーザーが外出先でもすぐに決済手続きできるように、決済との連携は今後も増えそうだ。


■LINEでシナリオ配信

 リピート通販専用カート「リピスト」を提供するPRECS(プレックス、本社東京都、廣田朋也社長)は、LINEの拡張ツール「e―Link(イーリンク)」との連携が好評だ。メールではなくLINEでシナリオを組み、メッセージを配信する導入企業が増えている。
 「メールは開封率が落ちているが、不達率も高まっている。LINEでステップメールのようなメッセージ配信を自動化することで、着実に購入へ誘導できる」(ASP事業部・岸田隆統括マネージャー)と話す。
 EC基幹システム「EC Force(イーシーフォース)」を提供するSUPER STUDIO(スーパースタジオ、本社東京都、林紘祐社長)は、チャット型の購入フォーム管理システム「SMART DIALOG(スマートダイアログ)」を提供している。チャットで応答しているような感覚で、注文情報の入力を完了できる仕組みだ。
 チャット型の入力フォームは、スマホユーザーに対し特に効果を発揮する。広告などで購買意欲が高まったユーザーを逃さないためにも、手軽に注文を完了できるサービスを提供できるようにしている。
 「アマゾンの『1クリック注文』のように、商品ページで購入者情報を入力して1クリックで注文を完了できる機能も提供している。CVR(購入率)を高められると好評だ」(EC Force事業部・川崎真吾事業部長)と話す。


■周辺ソリューション続々

 一部のカートベンダーは、ニーズの高い外部サービスとの連携を強化するだけでなく、自社でソリューションを開発し、ワンストップでEC事業の運営をサポートできる体制を整えようとしている。

(続きは、「日本流通産業新聞」6月18日号で)

記事は取材・執筆時の情報で、現在は異なる場合があります。

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