〈国民生活センター〉 「モノなしマルチ」に注意喚起/「マルチ商法」との混同に懸念

  • 定期購読する
  • 業界データ購入
  • デジタル版で読む

 独立行政法人国民生活センター(事務局東京都)は7月25日、ファンド型の投資商品や副業といった「役務」に関するマルチ商法について、若者を中心に相談が増えていることを受けて消費者向けに注意喚起を行った。これらは「モノなしマルチ」と呼ばれ、これまでも仮想通貨(暗号資産)や金融(投資)商品を介し、連鎖販売取引のような形で紹介者を募るビジネスが出てきては、国センがそのたびに注意喚起してきた経緯がある。一方で、こうした事業者がスマホやインターネットを駆使して組織を広げようとしたり、若者が消費生活センターに相談をしない傾向にあることから問題が表面化しにくい課題も出てきている。ただ、その定義については「マルチ商法」に含まれていることから、健全な連鎖販売取引(ネットワークビジネス)事業者からは、混同されてしまうとの懸念が出てきそうだ。

■20代の若者の相談が急増

 国センの発表資料によると「モノなしマルチ商法」とは、健康食品や化粧品といった「商品」を介したビジネスではなく、ファンド型の投資商品や副業など、具体的な商品(モノ)がなく、サービスなどの「役務」を商材にしたマルチ商法と定義する。こうした「モノなしマルチ」に関する相談は特に20代や未成年の若者で増加する傾向にあり、友人やSNSで知り合った人がきっかけを作るケースが多いという。
 暗号資産(仮想通貨)や海外事業などへの投資やアフィリエイトなどのもうけ話を「人に紹介すれば報酬を得られる」と勧誘され契約したものの、事業者の実態やもうけ話の仕組みがよく分からない上、事業者に解約や返金を求めても交渉が難しいというケースが多くみられるという。


■「モノなしマルチ商法」の定義

 「モノなしマルチ商法」というネーミングについて、ネットワークビジネス(NB)企業からすれば、「マルチ商法」と一般消費者が聞くと「連鎖販売取引」と混同されてしまうという懸念がある。
 国センは今回の発表で「モノなしマルチ」について「ファンド型投資商品や副業などの『役務』」と定義。国センはここ数年、PIO―NET(パイオ・ネット)に登録する際に「連鎖販売取引(ネットワークビジネス)」は「マルチ『取引』」としてカウントしている。
 今回、「商法」という言葉を採用したことについて「『取引』を使うと連鎖販売取引を連想してしまい、実態もないこのようなケースが果たして取引なのかという点を考慮した」(国セン)と説明。一般消費者が言葉から受ける印象を考慮したと説明している。その一方で「マルチ商法が連鎖販売取引に該当しないわけではない」と付け加える。国センでは「商品を介していない取引行為は詐欺だという認知が広がっている」と話し、今回の発表が本来の目的である一般消費者への認知が広がっていることに手応えを感じているようだ。
 国センのホームページによると「マルチ取引」とは「商品・サービスを契約して、次は自分が買い手を探し、買い手が増えるごとにマージンが入る取引形態と定義。買い手が次に販売組織の売り手となり、組織が拡大していく」とする。さらに公表資料には「マルチ商法」についての注記として「特定商取引法の『連鎖販売取引』とは必ずしも一致しない」と明記する。

(続きは、「日本流通産業新聞新聞」8月1日号で)

記事は取材・執筆時の情報で、現在は異なる場合があります。

Page Topへ