物流大手が相次いで荷主が設備やサービスをシェアするプラットフォーム型物流代行サービスに参入している。シェアリングモデルでは、物流代行サービスを標準メニュー化し、荷物を従量課金制で預かることで、大企業から中小企業まで幅広く取引することが可能だ。今春、千葉県の倉庫でシェアリングモデルを開始した、大和ハウス工業グループのダイワロジテック(本社東京都、秋葉淳一社長)は、人工知能(AI)やIoT(物のインターネット化)、ロボットなど最新技術を活用することで効率的な運用を目指している。日立物流は19年中にプラットフォーム型に参入する方針を明らかにしている。シェアリングモデルでは大手ECモールや新興企業が先行していたが、物流大手が大規模な投資で最新設備を備えた物流代行サービスを展開することで、利用企業はさらに拡大しそうだ。このサービスが普及すると、効率化に限界がある多くの物流代行サービスは廃れていくかもしれない。物流代行サービスは将来的にプラットフォーム型に集約されていく可能性もある。
従来の物流代行サービスは、物流施設の賃料や専用設備の導入費用、人件費などの初期投資が必要になる。プラットフォーム型では、初期費用がかからず、荷物の保管量や出荷量に応じて課金するため、中小企業でも利用しやすい。さらに事業成長に合わせて在庫量が増えても手軽に拡張できる点もメリットだ。
国内におけるプラットフォーム型のパイオニアは、アマゾンジャパンの物流サービス「フルフィルメント by Amazon(FBA)」だ。アマゾンへの出店者限定のサービスだが、他の販売チャネルの商品出荷にも対応しており、多くのEC事業者が利用している。
アマゾンジャパンが国内の物流市場に与えたインパクトが大きいのは言うまでもない。配送のスピード化を当たり前のものにしただけでなく、物流センターのロボット化のモデルケースとしても影響を与えている。
新興企業のオープンロジは14年から、全国にある提携倉庫を活用した、従量課金制の物流代行サービスを提供している。明瞭な料金プランで手軽に荷物を預けられる仕組みを作り、サービス開始から4年間で4000社以上の利用企業を獲得した。
■深刻な人材不足が背景
ECモールや新興企業がプラットフォーム型を展開する中、物流大手も参入してきた。
ダイワロジテックは今年4月、大和ハウス工業が開発した物流施設「DPL市川」において、シェアリングモデルを採用した物流サービスを開始した。物流施設の開発から手掛け、ECモールの縛りもなく、最新設備を活用した新たなモデルを発表した。
日立物流は数十億円をかけて埼玉・春日部市にプラットフォーム型に対応した物流センターを開設する。自動化設備を採用し、従来の施設よりも50%の少人化を目指す。
大手がプラットフォーム型に参入する背景には、物流業界の深刻な人材不足がある。配送においては宅配便運賃の値上げが進み、全体的な物流コストが上昇する中で、物流効率化の要請はますます強くなっている。
大手はこうした流れを受け、複数企業の荷物を受け入れ、最新設備を導入してスケールメリットをより追求できる施設を開発している。
「ダイワロジテックや日立物流のサービスが普及すれば、中小の物流業者にとっては脅威だ。ただ、プラットフォーム型サービスを利用するには、標準化されたサービスに合わせなくてはいけない。中小の物流業者には臨機応変な対応が求められるだろう」(オーティーエスの小橋重信執行役員マーケティング部長)と話す。
(続きは、「日本流通産業新聞」11月29日号で)
〈大手がシェアモデル参入〉/物流再編の呼び水となるか
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