「若者の消費者トラブル」対策の議論が続出/消費者庁は特商法施行規則改正へ

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 消費者庁などで「若者の消費者トラブル」に対する議論が目立っている。民法の成年年齢の引き下げを見据え、消費者庁を主体に若者向けの消費者トラブルを防ぐためだ。若年層向けの消費者教育に対する予算も1.5倍に増加させている。背景には「マルチ商法」に関する20代の相談件数が、全世代の35%を超えていることがある。LINEやフェイスブックといったSNSで勧誘される事例が目立つ。ネットは対面の必要がなく、ハードルが低くなっていることも背景にあるようだ。消費者庁では17年9月から「マルチ商法のマインドコントロール」を調査する目的で「若者の消費者被害を心理的側面から研究する検討会」を開始。3月21日には、日本司法書士会連合会がシンポジウムを開催して、にわかに議論が活発化している。消費者庁は、「若年層への取引」に対する明確な規制を目的とした特定商取引法施行規則の改正を予定。一連の動向を注視する必要がある。


■20代の「マルチ取引」が全体の30%超で推移

 消費者庁などが「若者のマルチ」に高い関心を示しているのは、他の世代に比べて20代の相談件数が突出して多くなっているためだ。PIO—NETによると、「マルチ取引」に関する20代の相談件数の構成比は、15年度が34.7%、14年度が32.4%、13年度が30.1%、12年度が29.0%と、ここ数年30%前後で推移している。
 近年目立つのは、SNSによる勧誘だ。「マルチ取引」は、17年度の割合は18〜22歳が16.7%、18〜22歳の「学生」が17.5%と増加傾向の一途をたどっている=別表参照。
 若者をターゲットにした事業者の行政処分もある。消費者庁は今年2月、若者をターゲットにスマホを使って違法にビジネススクールの連鎖販売取引を行っていたとして、iXS(本社東京都)を6カ月間の業務の一部停止を命じた。同社は「とりあえず話を聞きに来てくれればいいから」「紹介したいバイトがある」などと勧誘。「儲かっている。めちゃいいよ」「月々2万1600円払っても黒字になる」などと告げ、契約を広げていたという。
 こうした若者の「マルチ取引」に対する意識を探ることを目的に、消費者庁は17年9月から「若者の消費者被害を心理的側面から研究する検討会」を開始。計6回=別表=の会合を通じて、悪質な商法によりマインドコントロール状態に陥ってしまう若者はどのような心理的プロセスを経ているのかを解明。さらに、被害を未然に防ぐには、どのような注意喚起などを行うべきかを検討している。
 現在までに4回行われ、今年6月をめどに報告書の策定と対応策と検討するという流れだ。議論では、法律上の連鎖販売取引以外に、いわゆる「投資マルチ」といった悪質事業者の事案も取り上げられており、議論の実効性については疑問も残る。さらに、根拠とするPIO—NETの「マルチ取引」についても、投資マルチといったねずみ講に近いものも含まれることから純粋に若者の相談件数が増えているのかは不透明だ。
 同検討会は、あくまで調査・研究という位置付けのため「報告結果をもとに、法改正に結び付くという話ではない」(消費者行政新未来創造オフィス)と説明する。


■日司連、独自の提言も

 特商法改正に向けた機運も高まっている。
 3月21日、日本司法書士会連合会(事務局東京都)は都内で「若者のマルチ商法被害を考えるシンポジウム」を開催。同連合会消費者問題対策委員会の川戸周平委員長は「マルチ取引の在り方に関する提言」を行った。川戸氏は、国内の事業者の調査や現状の法規制、海外の事例などを踏まえ、若者のマルチトラブル防止に向けた提言をまとめた。

(続きは、「日本流通産業新聞」4月19日号で)

記事は取材・執筆時の情報で、現在は異なる場合があります。

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