【どうなる!?特商法5年後見直しの行方】「5年後見直し」本格検討開始へ/本紙調査「特商法改正で検討される可能性がある課題21」を解説

  • 定期購読する
  • 業界データ購入
  • デジタル版で読む

 08年の特商法大改正から5年が経過し、いよいよ本格的な「5年後見直し」の検討が始まろうとしている。訪問販売や電話勧誘販売では、「不招請勧誘規制の導入」が検討の俎上に乗るのはほぼ間違いないとみられている。通販では、虚偽誇大広告に取り消し権が導入される可能性がある。連鎖販売では、いわゆる「後出しマルチ」への対応が気になるところだ。「規制の導入方法によっては、健全な事業者の活動が非常に困難になる可能性もある」と懸念する声も業界内からは上がっている。消費者庁としては、早期に検討会を組成し検討を始めたい考えだ。本紙はこのほど、検討会の委員に選ばれる可能性がある、複数の識者に取材し、「特商法改正で検討される可能性がある課題21」をまとめた。各課題において想定される論点や実現可能性などについて、3週にわたって掲載する。

 検討会の開始時期や委員構成などについて、現時点では明らかになっていない。消費者契約法の改正に向けた動きなどもあり、特商法改正の動きが遅れているとの見方もある。ただ、消費者庁では「拙速にするつもりはないが、できるだけ早期に特商法見直しの検討を開始したい」(取引対策課)としており、15年の早い段階で検討会がスタートする可能性もある。
 本紙はこのほど、検討会委員に選ばれる可能性がある山本豊・京都大学大学院法学研究科教授や、池本誠司・弁護士、増田悦子・全国消費生活相談員協会専務理事、河村真紀子・主婦連合会事務局長に取材。特商法関連企業に顧問先を多数持つ千原曜弁護士の意見なども踏まえ、検討の俎上に乗りそうな課題と、各課題の実現可能性を探った。
 消費者庁では今回の検討に先だって、14年2月に庁内の勉強会として、法学研究者らを委員とした「特商法関連被害の実態把握等に係る検討会」(山本豊座長、以下勉強会)を発足。計6回の会合で特商法に関する被害実態の把握と論点の洗い出しを行った。今後発足する本検討会での議論にあたっては、同勉強会が14年8月にまとめた報告書が一つのたたき台になると考えられる。
(1)訪販・電話勧誘に不招請勧誘規制を導入
 検討会の焦点の一つになりそうなのが「不招請勧誘規制の導入」だ。導入されれば訪販・電話勧誘に深刻な影響が懸念される。8月の勉強会では議題とされなかったが、消費者庁は「勉強会でテーマに上がらなかった課題も含め、本検討会では検討課題になる。『不招請勧誘規制』についても、委員から強い声が上がれば、テーマにならざるをえない」(取引対策課)と話す。不招請勧誘規制の導入については、河村氏、池本氏の2氏とも、強く導入を求める姿勢を明らかにしており、検討対象になるのは必至の情勢だ。
 ただ、両氏の求める規制の形は異なる。河村氏が訪販について求めるのは「一番厳しい不招請勧誘規制」。勧誘の要請がなければ訪問してはならないというものだ。一方、池本弁護士が想定するのは「ステッカーを貼った家への営業を禁止する」かたち。両氏とも、「販売員に会ってしまうと断れない消費者がいる」という問題意識において共通しており、販売員に会うことなく訪販を拒絶できる方法を求めている。
 電話勧誘販売については、両氏とも、事前に登録した電話番号への営業電話を禁止する米国の「ドゥ・ノット・コール」制度が念頭にあるようだ。
 制度の実現性については不透明。山本氏は「不招請勧誘規制は当然論点になるだろうが、禁止が国際スタンダードなのかも含め慎重に検討すべきだろう」と話している。
 いずれにせよ、憲法上認められている、事業者の「営業の自由」と、消費者の「生活平穏権」のどちらが尊重されるべきかのせめぎ合いになる。5年前の大改正時と同様、何らかの政治的な力が働く可能性もある。

(続きは本紙1月8日号で)

記事は取材・執筆時の情報で、現在は異なる場合があります。

Page Topへ