消費者契約法専門調査会/またも合意に至らず/「約款の事前開示」巡り

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 消費者委員会は7月21日、消費者契約法(消契法)の改正に向けた専門調査会を開催し、「約款の事前開示」について再度議論を交わした。事業者側と消費者側の委員の間で意見の溝が埋まらず、この日も合意には至らなかった。
 消費者庁は今月7日の調査会で、消契法第3条1項に「(事業者は)消費者が消費者契約の締結に先立ち消費者契約の条項を容易に知ることができる状態に置くよう努めなければならない」との文言を追加することを提案。あくまで事業者の努力義務として提案されている。これを受け、事業者側の委員は「今の段階で消契法の条項を改正するのは時期尚早」「守備範囲が大きく重なる改正民法施行後の状況を注視した上で判断すべき」と指摘。今回の法改正に盛り込むことに懐疑的な意見が目立った。
 一般社団法人日本経済団体連合会の長谷川雅巳委員と、ヤフーの石島真奈委員はそれぞれ、消費者庁に事前に提出していた意見書で、消費者庁の提案に反対の意向を示していた。経団連は、約款の事前開示という新たな努力義務が導入されることについて「消費者契約の条項を全て書面化することが求められるのであれば、事業者の負担は現行よりも大きくなる」と懸念した。
 一方で、消費者側の委員からは消費者庁の提案に賛成する声が多く挙がった。一般社団法人全国消費者団体連絡会の河野康子委員は、「今回の提案は社会の中で当たり前のことである」と発言した。
 こうした委員のやり取りを受け、山本敬三座長(京都大学大学院法学研究科教授)は、「現時点で取りまとめるのは難しい。今日出た意見を踏まえて取りまとめ案を作成する」とした。
 今回の調査会で個別論点についての議論は終了し、次回(7月27日開催予定)からは取りまとめに向けて各論点を網羅的に検討する。消費者庁は、8月上旬にも最終的な取りまとめを行う方針だ。

記事は取材・執筆時の情報で、現在は異なる場合があります。

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