訪販各社/採用に改善のきざし/現場の声生かす

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 採用難の逆風が吹く中、一部のドアツードア訪販では、人員増に成功する企業が出始めている。労働集約型のドアツードア訪販にとって、営業マン数は売り上げに直結する重要な指標だ。丸八ホールディングスやアサンテは、営業現場の経験者を採用部門に充てたことが奏功し、採用状況が改善している。谷口コーポレーションは創業来、職場環境の改善に取り組んできたこともあり、離職率を低く抑えることに成功している。16年4月以降の採用者では、退職者がまだ1人も出ていないという。


■営業トップを採用担当に
 訪販営業マンの採用難・定着難は、異業種と比べても深刻だ。安定を求める若者が最近は多く、「働き方」がネックとなっている。「固定給が多く歩合が少ない給与体系を新設した」という訪販企業もあるが、採用・定着の問題を根本から解決する処方せんにはなりえてないのが現状だ。
 そんな中、人材の採用・定着に成功する訪販企業も出てきている。シロアリ防除施工を手掛けるアサンテは16年1月、営業本部長兼TS営業部長を務めていた宮内征取締役を、人材開発部長に充てる人事を行った。宮内氏は、最年少の取締役であり、営業現場から営業本部長にまで取り立てられた人物。同社としては、若き営業トップを採用・育成部門に回す異例の人事だった。「もしかしたら営業面ではマイナスかもしれない、それでも人材開発を重視した」(経営企画部)と話す。
 その結果、同社の営業マン数は、16年12月末(第3四半期末)時点で、前年同期比11.4%増の1016人にまで増えた。15年3月末時点の実績が、前年同期比2.2%増の983人だったことから考えると大幅な改善と言える。
 同社は今期、(1)宮内取締役自身による採用面接(2)採用広告予算の配分変更(3)映画タイアップなどのPR強化(4)研修施設トップへの支店長経験者を配置ーーーなどの施策に取り組んだという。宮内氏の採用トップ就任に合わせて求人費の増額も行った。
 宮内取締役が直接応募者と面接をするようになってから、数字は非公表だが内定辞退者が減少したという。
 採用広告は紙媒体を減らし、ウェブ広告に注力。昨年夏には映画「ゴーストバスターズ」とタイアップした広告を大規模に展開した。
 女性やシニア層など、これまで採用してこなかった人材についても、個別に業務内容を設定し、戦力として取りこむようにした。女性やシニア層の営業マンには、床下の点検作業を割り当てないなど、体力的に無理のない働き方を提案している。
 繁忙期のアルバイト施工スタッフの採用も今期から開始した。アルバイトは施工作業のアシスタントとして同行する。同社の施工スタッフは、2人一組で床下の施工作業を行う。その他、正社員の施工スタッフは、既存客への訪問も担当している。シロアリが飛び立つ5月の繁忙期は、スタッフが施工に掛かり切りになり、既存客への訪問が後回しになるケースがあった。施工作業を正社員一人とアルバイト一人の二人組で行うことにより、繁忙期も既存客への訪問が効率的に行えるようになったという。

(続きは、「日本流通産業新聞」3月9日号で)

記事は取材・執筆時の情報で、現在は異なる場合があります。

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