【成長を加速させるM&A戦略を聞く】ヤマノホールディングス 山野義友社長/ナンバー2を育てる「事業継承型M&A」(2025年6月19日号)

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 ヤマノホールディングス(ヤマノHD)は25年以降、写真スタジオの薬師スタジオ(本社東京都)とニューヨークジョーエクスチェンジ(本社東京都)の2社を買収した。ヤマノHDが志向するのは、成長させて売却するM&Aではないという。「安定した経営を継続して行っているが事業継承に課題がある」といった企業を傘下に収め、ナンバー2を育てる「事業継承型M&A」だとしている。ヤマノホールディングスの山野義友社長に、コロナ禍を経ての事業回復の状況や、今後の成長戦略の要となるM&A戦略について話を聞いた。

■訪販は人手不足

 ─25年3月期の状況はどうだったか。
 前期(25年3月期)は、コロナ禍後に1年半ほどマイナスになっていた和装宝飾事業の業績において、新規顧客の獲得により、ある程度売り上げが平準化し、利益が戻ってきたことが大きかった。ただ、上半期はまだ影響が残っていたため、伸びきらなかった感はある。
 美容事業は客足が完全に戻り、特に若年層向けの美容室が好調だった。ネイルサロンも、美容事業の黒字化に貢献した。今期(26年3月期)もこの流れを引き継ぎ、美容事業は、ある程度の黒字になると見込んでいる。
 ─ライフプラス(訪販)事業と和装宝飾事業の集客の状況は。
 ライフプラス事業は業界的に厳しい状況が続いている。新商材を導入し、少しでも新規客を獲得していくしかないが、最も大きな課題は「働き手の問題」だ。
 従業員の採用が難しい。特に地方での採用は、ほぼ不可能に近くなっている。ライフプラス事業では、採用をどう維持していくかが最大の課題だ。
 和装宝飾事業も対面販売がメインだが、やはり採用が大変だ。総合職も売り手市場だが、それ以上に大変なのは現地採用。アパレルや物販、サービス業もそうだ。地方は人手不足が明白となっている。さらに、当社の業界は外国人の販売員を採用できない点がマイナスポイントだ。従業員の問題という点で、他の物販に比べ着物はハードルが高い。今後も従業員の採用の問題は残り続けるだろう。
 ─以前は赤字もあった、さまざまな業態の子会社の経営が安定化してきている。秘訣は。
 当社の経営の要となっているのは、毎週行っている「トレース会議」だ。各部門のトップが集まり、業績を細かく追跡し、月次や四半期、半期の見込みを全て確認する。予算を作成する段階から、現実的でない予算や、根拠のない予算は絶対に作らせない。その予算に対して週次で実績を追いかけさせている。
 売り上げを上げるなら何を根拠に、粗利を上げるなら何を根拠に、経費を削減できるなら何が根拠なのか、各部門に毎週会議の中で追及している。
 これまで数年間、次世代育成のために各部門のトップに議長を任せていたが、それがうまく機能しなかった。
 そこで、「トレース会議」の議長を昨年、私が務めるようにしたところ、予実の精度が戻った。
 今後の最大の課題でもあるが、後継者問題として、私がいなくなった時にこの会議の議長ができる人がいるかどうかが、ポイントとなるだろう。


■成長を加速させるM&A戦略

 ─M&Aについて聞きたい。直近で古着販売のニューヨークジョーチェンジと写真スタジオの薬師スタジオを買収しているが。

(続きは、「日本流通産業新聞 6月19日号で)

記事は取材・執筆時の情報で、現在は異なる場合があります。

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