<政府> 「物流問題」への対策を発表/「送料無料」「再配達」などを問題視(2023年6月15日号)

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 政府は6月2日に開催した、わが国の物流の革新に関する関係閣僚会議で、「送料無料」表示の見直しや、再配達率の半減に向けた政策などを盛り込んだ「物流革新に向けた政策パッケージ」をまとめ、発表した。物流の停滞が懸念される「物流の2024年問題」の改善策として、(1)商慣行の見直し(2)物流の効率化(3)荷主・消費者の行動変容─について、抜本的・総合的な対策を策定したという。

■ガイドラインを策定

 商慣行の見直しについては、荷主企業と物流事業者の間で結ばれる、運送契約に着目した。契約の都合上、物流事業者が独自に効率化を図ろうとするのが困難な点や、契約にない作業を指示されたりするケースがあることを問題点として取り上げた。
 荷主企業と物流事業者間の取引関係では、多重下請け関係が存在しており、運送事業者が適正な運賃を収受することが困難となっていることが多いとしている。
 これらの改善策として、物流の適正化・生産性向上に向けての「ガイドライン」を示し、これに則して大手の荷主企業・物流事業者は、業界・分野別に「自主行動計画」を作成。運送契約に含まれる荷待ち・荷役などの範囲を明確化し、正当な対価の収受を促進するとしている。
 2024年度には輸送力が14%(トラックドライバー14万人相当)不足する可能性があると指摘。物流の適正化・生産性向上に関する「自主行動計画」を作成し、政府においても年内に公表するとしている。
 ガイドラインの順守状況については、23年度末にフォローアップ調査を行い、結果を公表するという。


■「送料無料」見直しへ

 同会議では、「送料無料」表示についても問題視した。トラック事業者をはじめとする物流事業者は荷主企業に対する交渉力が弱く、適正な運賃・料金を収受できていないことから、取引環境の適正化を強力に推進するとしている。
 商慣行の見直しについては、原則、今年度に見直しを図る方針としている。
 実効性を確保するため、「トラックGメン(仮称)」を設置し、適正な取引を阻害する疑いのある企業の監視を強化していくという。
 自家用自動車により自社の貨物を輸送する事業者についても、労働基準法や改善基準告知の順守の徹底を図るとしている。


■再配達を半減へ

 消費者の意識改革・行動変容を促す取り組みでは、急いで受け取る必要のない荷物については、消費者がよりゆとりを持った配送日時を指定するなどして、対応していくとしている。
 現在再配達率は12%で高止まりしており、宅配事業者の負担が増加している。
 2024年の輸送力不足を補うため、再配達率を半減させる対策を、緊急的に講じ、対策は23年の年末までに具体化するとしている。
 2023年末までに、トラック運送に係る契約内容の見直しに向けた「標準運送約款」「標準的な運賃」の見直しを図る。


■24年国会への法案提出へ

 荷主企業と物流事業者間における物流負荷の軽減や、多重下請構造の是正、荷主企業の経営者層の意識改革・行動変容などに向けた規制的措置については、24年通常国会への法案提出を視野に具体化するとしている。

記事は取材・執筆時の情報で、現在は異なる場合があります。

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