【契約書面のデジタル交付】 SNSやアプリでも書面交付可に/消費者庁がガイドラインを公表(2023年5月11日号)

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 消費者庁は4月21日、契約書面や概要書面の電子交付を行うための具体的方法を示したガイドラインを発表した。ガイドラインでは、契約書面の電子交付を行うための手順や説明事項、禁止事項などを、細かく示している。ガイドラインでは、書面の電子交付の方法として、「SNSを通して行うことも可能」であることを示した。消費者庁によると、電子交付の要件を満たしていれば、スマホアプリを通じて書面の電子交付を行うことも可能だとしている。書面の電子交付を行うためには、「消費者が電子交付を承諾したことを示す書面」の交付を行わなければならないが、それさえクリアすれば、汎用性がありそうだ。訪問販売やネットワークビジネス(NB)に詳しいさくら共同法律事務所の千原曜弁護士は、「オンライン申し込みを主体としている連鎖販売企業が、制度の一部を利用する形ならば、利用可能ではないか」と話している。

■NBでは書面交付に11段階

 「契約書面等に記載すべき事項の電磁的方法による提供に係るガイドライン」では、契約書面や概要書面の電子交付について、「具体的な手順」や、「電子交付の承諾の取得に当たって説明する事項」「消費者に電子交付が可能かの適合性の確認方法」「電子交付の手段」「電子交付における禁止事項」などを示している。
 本紙では、ガイドラインを基に、NB(連鎖販売取引)を例に挙げて、電子交付の手順を示した図を作成した(=図を参照)。
 NBの場合、概要書面と契約書面の2種類の書面の交付を行う必要があるが、どちらも、電子交付が可能だ。
 概要書面と契約書面の両方を電子交付にする場合、消費者に、書面の電子交付を希望するかどうかを確認するところから、契約書面が消費者に到達したかを確認するまで、大きく分けて11のステップを踏まなくてはならない。


■書面毎に確認が必要

 電子交付を行う場合、最初のステップとして、消費者に電子交付を希望するかどうかを確認する。その後、電子交付に関する事項を説明する。説明の中では、「原則として紙での交付となるが電子交付も可能であること」「消費者の承諾がなければ原則通り紙での交付となること」を説明する必要がある。
 電子交付を行うかについては、概要書面と契約書面で、それぞれ別々に確認する必要がありそうだ。
 消費者庁に、「概要書面と契約書面の電子交付を希望するかを、消費者に一括で確認することは可能か」と尋ねたところ、「本来、契約内容やクーリング・オフについて記されている概要書面を消費者が確認してから初めて、消費者が契約するかどうかの意思を示すものだと理解している。概要書面の中身を目にしていないのに、まだしていない契約の契約書面の電子交付に承諾するというのは、順番が間違っている」(取引対策課)と話している。


■スマホでも電子交付可能

 消費者が電子交付に承諾した場合、「電子交付ができるスマホ端末やPCを使い慣れているか」などの適合性を確認する。
 消費者がスマホしか持っていなかったとしても、「画面のサイズが4・5インチ以上」などの要件を満たしていれば、交付は可能だ。
 消費者が、スマホやPCのサイバーセキュリティーを確保していることも、適合性の要件に含まれている。
 ガイドラインによると、「サイバーセキュリティーを確保している」とは、端末のOSのサポートが終了していないような場合を指すとしている。


■概要書面は電子交付可

 書面の電子交付について、消費者の適合性が確認できたら、「書面の電子交付の承諾を得たことを証する書面の交付」を行う。ガイドラインでは、承諾に当たって、消費者が事業者の専用サイトにアクセスして、必要事項を記入することを想定している。
 ただし、「契約書面の電子交付に承諾しますか」という質問に対して、「はい」「いいえ」をチェックボックスで選ばせるような場合、承諾にならないと規定している。消費者がキーボードを使って氏名を記入する方法は可能だとしている。
 承諾を証する書面は、原則として物理的な書面として交付する。

(続きは、「日本流通産業新聞」5月11日号で)

記事は取材・執筆時の情報で、現在は異なる場合があります。

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