〈消費者委員会〉 チャット勧誘規制で議論/通販規制と差別化求める声も(2023年4月6日号)

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 消費者委員会は4月4日、「デジタル化に伴う消費者問題ワーキング・グループ(以下WG)」の会合を開催し、「チャット機能を利用した勧誘を伴う通信販売」についての議論を行った。チャット規制の方向性について、有識者などからヒアリングが行われた。公益社団法人日本通信販売協会(JADMA、事務局東京都)の万場徹専務理事からは、「『チャット規制』では、通販事業への過剰規制になりかねない。『不当な勧誘行為』といった別の切り口が適切ではないか」との声が上がった。
 SNSなどのチャット機能を用いた勧誘を規制すべきとの声が上がり始めている。
 WGの会合では、チャット勧誘規制の導入について(1)承諾をしていない者に対するチャット機能を利用した広告の提供の禁止(2)チャット機能を利用した勧誘時の氏名・目的等の明示(3)チャット機能を利用した商取引における新たな規制の導入(4)勧誘規制の対象(5)法定表示事項の項目追加─の5点が論点として上がった。
 (3)の新たな規制に関しては、通信販売において、消費者と販売業者がチャットで直接やり取りをして購入した場合、取消権やクーリング・オフの導入の検討も必要ではないかという意見も聞かれた。
 有識者として参加した、上智大学の杉谷陽子教授は、「米国の研究によると、昔はパソコンを通じたコミュニケーションは現実性を感じていなかった。しかし近年は、即時性が高まり、日常的になったことから、チャットによるコミュニケーションには現実性が増してきていると言われている。特に会社名ではなく、個人名によるコミュニケーションが、断りにくい環境を作っている」と述べた。
 論点(4)の部分では、勧誘規制の対象について、「チャット機能」のうち、何を規制すべきかが取り上げられた。
 チャット機能全般を規制すると、通販企業の商品説明や問い合わせ対応が規制となる可能性がある。
 通販事業者の実務が大きく制限されることが予想される。
 事業者を代表してヒアリングに参加した、JADMAの万場氏は、通販事業への過剰規制を懸念。通販事業の実務の観点から意見を述べた。
 万場氏は、「一般的な通販事業の業務として、『問い合わせ』『入力補助』『情報発信』『クロスセル』などの作業にチャットが使用されている。いわゆる『チャット規制』という切り口では、これらの業務が制限されてしまう」とした上で、「『通販のチャット規制』ではなく、『不当な勧誘行為の規制』とすべきではないか」と述べた。
 前述の論点(2)に関しても、通販事業者から、「自動応答で表示を求められても明示できない」「従業員保護の観点からも、チャット時に明示するのは過剰な要求ではないか」との意見があったと述べた。
 万場氏は、「通販のチャット規制という論点では、今後通販事業者の活動が大きく制限される可能性がある。チャット規制の方向性として、通販とは切り離し、不当な勧誘として規制すべき」と改めて主張した。

記事は取材・執筆時の情報で、現在は異なる場合があります。

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