〈ステマ検討会〉 「包括規制」に委員ら一致/「告示指定」もおおむね賛同(2022年11月3日号)

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 消費者庁は10月25日に開催した、「ステルスマーケティングに関する検討会(以下、ステマ検討会)(中川丈久座長)の第5回会合で、”ステマ広告”を、景品表示法の告示による禁止の対象の一つとして加える方向であることを明らかにした。ステマ検討会の委員全員が、「広告であるにもかかわらず広告であることを隠すこと」を告示に指定し規制することに、概ね賛同した。悪質事業者とのいたちごっこを避けるべく、幅広く包括的な規制にすることについても、多くの委員の意見が一致した。


■「広告であることを隠す」と定義

 同会合では事務局である消費者庁表示対策課が、「主な検討事項のこれまでの整理と今後の検討の視点」をまとめた資料を公表した。同資料では、ステマを「広告であるにもかかわらず、広告であることを隠すこと」と定義。景品表示法5条3号の、告示による禁止行為の一つとして、ステマを指定する方向性を示した。
 公表した資料では、ステマ規制に関する今後の検討の視点として (1)一般的・包括的な規制とせざるをえないのではないか(2)景表法5条3号の告示に新たに指定するということが考えられる(3)規制の対象となる「表示」の範囲をどのように考えるか(4)事業者の予見可能性のために、運用基準の策定を行う必要があるのではないか─といった点が示された。


■「予見可能性は必要」

 新経済連盟の片岡康子委員は、告示指定は選択肢の一つとしつつ、「事業者の予見可能性を担保し、運用基準を明確にする必要がある。施行までに十分な期間が必要」などと意見を述べた。
 京都大学大学院准教授のカライスコス・アントニオス委員は、「諸外国では、ステルスマーケティングに関する規制が進んでいるが、細かい規定を定めていない。予見可能性を高めるために、運用基準の具体化は必要だが、社会通念に照らして規制する形が良いのではないか」と発言した。
 弁護士の壇俊光委員は、「ステマ広告にもさまざまな類型が存在するため、包括的な規制が必要だ。告示の指定は確実に必要。運用基準はガイドラインで定めるべき」とする案を示した。
 (一社)日本情報経済社会推進協会の寺田眞治委員は、「運用基準は必要だが、細かく定めるような硬直したものは本末転倒。法律の抜け穴が見つけられるようでは、実効性が確保できない」などと発言した。
 立教大学法学部の早川雄一郎委員は、「デジタルプラットフォーマーも当局の規制を参考にして考査などを行う。ガイドラインは必要だ」などと発言した。


■優良・有利誤認の規制強化を指摘

 景表法や薬機法に詳しい専門家からは、ステマの規制強化の内容について、実効性の弱さを指摘する声が聞かれた。
 東京神谷町綜合法律事務所の成・眞海(せいしんかい)弁護士は、「ステマの告示指定は、アフィリエイターの広告に対して、一定の抑止になる気はする。ただ、SNSやユーチューブのステマに対して、どれほどの抑止力になるかは不明だ。課徴金のような具体的な不利益がなければ機能しないのではないか」と話す。
 薬事コンサルタントの関山翔太氏は、「不当な顧客誘引を行うステマは現在も、不当表示を伴っている。ステマ規制を新たに設けなくても、景表法違反による規制は十分可能だ」と話す。
 関山氏は、21年に行われた豊胸サプリを販売していたアクガレージへの措置命令を例に挙げつつ、「実感としてステマ広告は少なくなってきているものの、健康食品について不当表示を行っているステマ広告が、優良誤認表示として処分される可能性は十分あり得る」とコメントしている。

記事は取材・執筆時の情報で、現在は異なる場合があります。

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