今年3月以降、急速な円安ドル高が進行した。対ドルだけにとどまらず、多くの通貨に対して”円安”基調が続いている。円安で活気付くのが越境EC市場だ。越境EC市場はコロナ禍における世界的な巣ごもり需要の拡大を受け、市場規模が拡大している。今回、円安が進行したことでさらなる拡大が期待されている。越境EC支援大手のBEENOS(ビーノス)も越境ECにおける流通総額が3月以降、拡大傾向にあるという。追い風が吹く越境EC市場の最新トレンドを追った。
越境EC支援大手のBEENOSは6月17日、「上半期 越境ECトピックス」発表会を開催した。コロナ禍で海外ユーザーのデジタルシフトが進み、越境EC市場は拡大傾向にある。さらに円安が進行したことで、その拡大ペースが加速しているという。
5年2カ月ぶりの円安ドル高水準に達した3月11日以降、10日間の越境ECにおける購入金額は以前と比較して18.8%伸びている。
BEENOSが提供する海外ユーザーの購入代行サービス「Buyee(バイイー)」では、コロナ禍になった20年以降、流通総額が増加傾向にある。円安傾向が強まっていった21年以降は、増加ペースが加速している。
「Buyee」では3月11日以降、ユニークユーザー数は10・9%増、顧客単価は1102円増になったという。
■新たな顧客層が利用
BEENOSは、「円安は輸出において追い風となっている。円安が進んでいった3月は『Buyee』の購入件数や購入金額は上昇した。IR(投資家向け広報)の関係上、詳細は言えないが4、5月も変わらず前向きな状況だ」(直井聖太CEO)と話す。
越境ECにおける購入者の国・エリア別伸長率では、1位がブラジル、2位がメキシコだった。年齢別では1位が19歳以下、2位が25~29歳になった。既存の顧客層というよりは、円安によって新たな国・エリア、世代の利用が進んでいるようだ。
BEENOSの子会社で越境EC支援を手掛けるBeeCruise(ビークルーズ)は、「ブラジルの通貨であるレアルは、ドルと比べると2倍くらい円安が進んでいる。メキシコの通貨であるペソもドルより円安が進んでいる。円安が越境ECのきっかけになったようだ」(執行役員 本間哲平氏)と話す。
■高額商品も人気に
今年5月の「Buyee」における商品ジャンル別の購入金額ランキングでは、1位がポケットモンスターのトレーディングカード、2位がアニメのフィギュアになった。これまでも人気の高いジャンルが上位に入る一方、「外装・エアロパーツ」「東洋彫刻」といった高額商品もランキングに入ってきた。
「高額帯の商品や資産になりやすい商品がランクインしている。『外装・エアロパーツ』は東南アジアからの購入が多い。『東洋彫刻』は木彫りの仏像などだが、金額は数万円から、高くて20万~30万円する。こちらは中華圏から買われることが多い。円安が高額商品の購入を後押ししているようだ」(本間氏)と話す。
■新たな売れ筋が台頭
越境EC市場というとかつては中国向けが大半を占めていた。その後、台湾向けに健康食品や化粧品を販売する事業者が越境EC展開を活発化する動きもあった。
コロナ禍になり、越境EC市場が少しずつ様変わりしている。コロナによる行動規制の影響を大きく受けた欧米圏からの越境ECが拡大した。売れる商材も中国向けだと日用品や化粧品などが強かったが、欧米圏向けだとアニメやキャラクター関連商品、ブランド品、時計、カメラ、楽器などコレクター向けアイテムが強い。投資目的にコレクターアイテムを購入するユーザーも多いようだ。
(続きは、「日本流通産業新聞」7月7日号で)
〈越境EC市場〉 ”円安”で市場拡大が加速/新たな国、世代からの購入も増加(2022年7月7日号)
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