〈訪販・NB各社〉 インボイス問題、対応進まず/5省庁が「優越的地位の濫用」について見解も (2022年2月17日号)

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 多くの訪販・ネットワークビジネス(NB)企業が、インボイス制度への対応に、まだ乗り出せていないようだ。本紙はこのほど、インボイス制度への対応に関して、訪販・NB企業を対象に、ヒアリングによる調査を実施、8社から有効回答を得た。その結果、半数に当たる4社が「検討中」と回答。残りの4社は、対応の方向性を決めていたが、いずれも「情報周知が進んでいない」という事だった。訪販・NB企業において、インボイス対応の具体的な取り組みが進んでいない実態が明らかとなった。「同業他社の対応方法を知りたい」とする声も多数聞かれた。そんな中、経済産業省や財務省、公正取引委員会など、5省庁は連名で1月19日、インボイス制度への事業者の対応方法について、指針を発表した。事業者が、インボイス制度への登録を契機に、元請けと下請けの契約内容を見直すことについて、「双方納得の上であれば、独占禁止法上問題となるものではない」とする見解を示した。こうした行政機関の見解をきっかけに、事業者のインボイス制度への対応が進む可能性もある。

■免税から課税事業者に

 インボイス制度では、売り手から買い手に、消費税額などを示した「適格請求書(インボイス)」を発行する。同制度が本格開始すると、インボイスのない取引については、消費税の仕入れ税額控除の対象とならなくなる。年間売上金額が1000万円未満の消費税免税事業者も制度の対象。制度が開始する23年10月以降は、インボイスの発行事業者として登録すると、売り上げ規模にかかわらず、消費税の課税事業者となる。
 多くの訪販・NB企業では現在、販売員・会員の報酬額に消費税を上乗せして支払っている。販売員・会員が、インボイスの発行事業者として登録すると、少額の報酬であっても、販売員・会員に、消費税の申告・納税の義務が発生することになる。一方、販売員・会員が発行事業者としての登録を行わない場合は、実質的に、会社側に、報酬額に応じた消費税が追加で課税されることになる。
 ただし、23年10月の制度発足以降、6年間の経過措置期間が設けられている。23年10月から26年9月までは、非登録事業者の消費税額の80%を仕入れ税額控除に含むことができる。26年10月から29年9月までは、50%を含むことができるとしている。


■公取委などが見解示す

 販売員・会員がインボイスに登録しなかった場合、会社側に大きな経済的負担が生じることになる。例えば、年間一人当たり10万円の報酬と消費税分1万円を、1万人の販売員に支払っていた場合、消費税額はトータルで1億円となる。販売員の9割がインボイス制度に登録しなかった場合、会社側に9000万円の消費税負担が追加で発生することになる。現在のまま、消費税込の報酬を支払い続ける場合、会社側の視点からすると、国と販売員の両方に消費税を支払っているかのような状態が発生してしまう。
 こうした点について、全国の税務署では現在、「インボイスの対応方法として、非登録事業者に消費税分を差し引いて報酬や手数料を支払う方法は問題ない」旨の案内を行っているという。
 こうした手法については、公正取引委員会が以前、「インボイス制度を契機に、元請けが下請けに対して一方的に契約内容の見直しを迫る行為が、優越的地位の濫用に当たる可能性があり、独占禁止法や下請法に抵触する可能性がある」という見解を示していた。
 経済産業省では1月19日、財務省、公正取引委員会、中小企業庁、国土交通省と連名で、インボイス制度に関する指針を発表した。同指針では、インボイス制度の仕入れ税額控除に関連した報酬や手数料の支払いについて、「双方納得の上で取引価格を設定すれば、結果的に取引価格が引き下げられたとしても、独占禁止法上問題となるものではない」とする見解を示している。「双方納得の上」かどうかの判断は、公正取引委員会が、下請法に基づいて判断するとしている。
 指針の考え方に従えば、訪販・ NB企業においても、販売員や会員それぞれと、明確な合意のもとで、「非登録の販売員には報酬から消費税額を差し引いた金額を支払う」旨を取り決める場合は、独禁法や下請法に抵触することはないということのようだ。NB企業を顧客に持つある税理士は、「具体的な方法として、報酬の減額について文書を取り交わしておくのが有効ではないか」と話している。


■販売員への周知進まず

 本紙がこのほど、訪販・NBの大手から中小の8社から行ったヒアリングでは、8社中4社が対応を「検討中」と回答、「対応は決まっているが周知不足」と答えたのも4社だった。8社のほかに「回答を控えたい」という企業も3社あり、対応に苦慮する企業が多い現状が見えてきた。

(続きは、「日本流通産業新聞」2月17日号で)

記事は取材・執筆時の情報で、現在は異なる場合があります。

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