〈特商法・消契法の改正論議〉 既存客への電話禁止も/過剰な規制に反対相次ぐ

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電話勧誘販売への規制を議論している特商法専門調査会。8月までに法改正の方向性をまとめる

電話勧誘販売への規制を議論している特商法専門調査会。8月までに法改正の方向性をまとめる

特定商取引法(特商法)と消費者契約法(消契法)の改正に向けて議論を行っている消費者委員会が、通販に対する規制強化を検討している。委員を務める消費者団体などが、顧客へのアウトバウンドの電話を禁止する案や広告を勧誘行為と見なして規制を強める案を提案。業界団体や事業者は健全な事業活動を阻害するとして反発している。消費者委員会は今年8月にも法改正の方向性を示す見通し。法改正の結論が出て手遅れになる前に、EC業界としても過度な規制に反対を表明する必要がある。

〈特商法改正の争点〉
「顧客への電話禁止」

 消費者委員会・特商法専門調査会は今年3月から、特商法の改正に向けた議論を進めている。特商法改正における争点の一つは、不意打ち的な電話勧誘販売を禁止するか否かだ。
 電話勧誘販売は新規顧客に電話をかけて勧誘を行う行為とは限らない。過去1年以内の注文回数が2回未満の既存客に電話をかけて勧誘すれば、電話勧誘販売に該当する。
 例えば、EC事業者がサンプル会員に電話をかけて本製品の契約を結ぶケースや、1年以上注文がない休眠顧客に電話をかけて商品を販売する行為は「電話勧誘販売」に当たる可能性が高い。
 電話勧誘販売が禁止されれば、EC事業者が一般的に行っている営業活動は大幅に阻害される。
 同調査会では規制の具体案として、事前に行政などに登録した消費者宅への営業電話を禁止する制度などが検討されている。
 こうした規制強化の動きに対し、特商法専門調査会の委員を務める公益社団法人日本通信販売協会(JADMA)の佐々木迅会長は、「少なくとも過去に1回購入した方、もしくは資料請求した方への電話勧誘は認められるべき」と主張。「通常の事業者が営業活動できないような仕組みは作るべきではない」と反発している。
 6月10日の専門調査会に参考人として参加した高島屋は、通販の顧客に対する電話勧誘販売はサービス向上や顧客との信頼関係構築に不可欠であるとして過度な規制に反対した。


〈消契法改正の争点〉
「広告は勧誘か」

 消費者委員会は昨年11月から、消契法の改正に向けた議論も進めている。消契法は事業者と一般消費者が結ぶ契約のルールを規定した法律。今回の改正論議でEC業界に大きな影響を与える争点の一つは、ウェブ広告やチラシなどを「勧誘行為」と見なすか否かの議論だ。
 同調査会の委員を務める一部の消費者団体や学者は、広告を勧誘と見なすべきと主張している。ターゲティング広告の発達で誘引性の高いネット広告が増えている上、ネット広告の表記は消費者の購入意思の形成に直接的に働き掛けることなどを根拠に挙げた。
 消契法は、勧誘の際に不実告知(事実と異なることを告げる)や不利益事実の不告知(メリットだけを強調してデメリットを言わない)などがあった場合、契約の取り消しを認めている。
 現行法では広告は勧誘行為に該当しないが、仮に広告が勧誘と見なされるようになった場合、理論上はウェブ広告経由で受注した全ての契約は取り消しの対象となり得る。

(続きは日本ネット経済新聞 6月25日号で)

記事は取材・執筆時の情報で、現在は異なる場合があります。

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