公正取引委員会/「モールやめられない」が7割/ECの取引実態調査を公表

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 公正取引委員会は1月29日、「消費者向けeコマースの取引実態に関する調査報告書」を発表した。調査結果によると、調査の対象となったEC小売事業者の68%が「オンラインモール販売を容易に取りやめられない」と回答した。
 同調査は、「メーカーと小売事業者」「オンラインモール運営者と出店事業者」の二つの取引関係を主軸に、取引実態を把握することを目的に実施した。18年1〜11月の11カ月間、1200人のEC事業者と2000人の消費者にアンケート調査を実施。117社のオンラインモール運営者や出展企業にもヒヤリング調査を行ったとしている。
 調査結果によると、メーカーから小売り事業者に対して、「価格や広告表示の内容に関する指導・要請があった」と回答した事業者が24%あった。「オンラインでの販売が制限された」と回答した小売事業者が29%あったという。公取委では、こうしたメーカーによる販売価格の表示の指導や要請は、独禁法違反に当たる可能性があるとしている。
 オンラインモールと出店企業の関係についての調査では、オンラインモール運営事業者が出店者に対して、自社ECサイトや他モールで販売する際と同等もしくはより安い価格で販売することを要請する、いわゆる「MFN条項」を設けている実態は確認できなかったとしている。
 ただ、「商品の発送以外には顧客情報を利用できない」「オンラインモール運営業者が指定した決済方法しか使えない」など、オンラインモールに対する不満の声が多く寄せられた。一方で、「オンラインモール販売を容易に取りやめられない」と回答した事業者も68%に上るとしている。
 公取委では、こうしたオンラインモールと出店者の取引環境では、オンラインモールが優位な立場になりやすく、依存度が高い事業者にとって不当な不利益を受け入れざるを得ない状況が懸念されるとしている。
 今回の調査結果によって、特定の事業者が法的処罰の対象になることはないという。今回の調査結果が、公取委が現在行っている、デジタルプラットフォーマーの規制に向けた取引実態の調査の、「参考資料となる可能性はある」(取引企画課)としている。

記事は取材・執筆時の情報で、現在は異なる場合があります。

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