〈構造改革が軌道に〉アテニア 須釜憲一社長/今年度は成果を出す1年

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ファンケルグループのアテニア(本社神奈川県、須釜憲一社長)が進めてきた構造改革が、軌道に乗りつつある。〝最高級の価値をリーズナブルに提供する〟という原点に立ち返り、一昨年からコンセプトの再定義や商品のリニューアルを進めてきた。「今期は勝負の年」と位置付けている須釜社長に、業績回復に向けた取り組みを聞いた。

前期は売上計画未達

 ─まず前期を振り返ってほしいが、14年3月期の売上高は。
 「アテニア単体の売上高は公表していない。しかし、計画に対しては下回った。アテニアは減収傾向にある。前期はその悪循環を止めるための計画を立てていたが、計画には及ばなかった」
 ─計画未達の要因は。
 「理由は三つある。一つは商品、次に通販での施策面、三つ目はブランド力だ。商品については主力のスキンケアが前年を下回った。スキンケアは今年1月にリニューアルしたため、売り上げに貢献したのは第4四半期以降だった。それまで(第1~3四半期)の落ち込みをリカバリーするに至らなかったが、第4四半期以降は順調に推移している。通販の施策では、従来の手法による新規獲得施策の効率が悪化していたため、昨年12月から中止した。それがスキンケアの低迷にも影響している。ブランディングについては百貨店ブランドや通販化粧品といった境界線が薄れていく中で、アテニアの認知度や知名度を効果的に高めることができなかった」
 ─それらに対する手は打っているのか。
 「着実に進めている。商品では昨年11月にリニューアルした夜用美容クリームの『インナーエフェクター』が順調で、売り上げや口コミによる評価も非常に高い。アットコスメのベストコスメアワード2015『上半期新作ベストクリーム』第1位を受賞した。1月にリニューアルしたスキンケアラインも前年と比べ2桁増となっている。3月からメイクラインもリニューアルしているが、『インナーエフェクター』以降の商品は、『おしみなく、うつくしく。』というブランドステートメントを具現化した商品に刷新している」


新規顧客獲得策を刷新

 ─社長に就任されて3年目を迎えた。今期の抱負は。
 「今期は勝負の年で成果を出す年だ。社長就任1年目は、アテニアがどのように評価されていて、ロイヤルティーの高いお客さまは何に期待しているのかを把握しつつ、3カ年の経営計画を策定して、アテニアのコンセプトを再定義した。2年目は商品のリニューアルに取り組んだ。そして3年目は新たなコミュニケーション改革の実現と業績を回復させるのが私のミッションだ」
 ─売り上げを拡大するには新規顧客の獲得が欠かせないと思う。昨年12月から中止している従来の獲得策をどのように変更したのか。
 「新規の獲得策もそうだが、まずわれわれの意識を変える必要があった。費用対効果の悪化で、当社を含め通販会社のCPOは上昇している。そこで、『アテニアを使ってみたい』という見込みユーザーを特定化して、その人たちに効率良く商品を使っていただく機会を作ろうと判断した。そのためには基本的に新規獲得策としては、まず本製品を購入いただけることを前提とした方針に切り替えた。それには、どのように付加価値を高めて商品の良さを伝えられるのかが大事で、恐らくわれわれ企業側が薦めても、なかなか信頼されないだろう。現在の消費者は企業側によるメッセージを鵜呑みにしなくなってきているからだ。その背景にはインターネットやSNSが影響していると思う。従って、いわゆる生活者目線の評判作りをするというのが大きな方針だ」
 ─新規獲得の一環としてインターネットやソーシャルメディアを活用するということか。
 「そうだ。実際にアテニアの商品を使っている人たちに、どんどん商品を評価してもらう方向に切り替えている。その一環として今年4月、弊社のコミュニティーサイト内に『アテニア アンバサダー クラブ』を発足した。アテニアの商品を長くお使いいただいて、商品についてもご理解いただいている方々の生の声を、われわれの編集なしで掲載している。ここからアテニアのブランドや商品価値を高める評判作り、新規の顧客獲得につなげようとしている」


継続率向上に主眼

 ─狙いは分かるが、マスによる広告の方が新規の獲得数やスピードは速いのでは。
 「売上高に与える新規顧客の影響力は少ない。圧倒的に既存のお客さまの方が売り上げには影響する。従来の新規獲得手法であるポーチ付きの1000円のトライアルキットでは、2回目以降の継続率が低下していた。仮にマスで展開して一時的に新規顧客を獲得したとしても残存率は低く、2回目、3回目のリピートは期待できない。むしろ、獲得数は少なくても継続率を高めることに主眼を置いた。これまで年間約20万人の新規顧客を獲得してきたが、シミュレーションし直した結果、従来の3分の1以下の獲得数でも売上高は十分維持できるとみている。ミドルクラスにあたる顧客のリテンションをしっかりと確実に行っていくことが、最も売り上げには貢献する」
 ─では年間20万人の新規獲得数は大幅に減少するのか。
 「その3分の1で十分だ。まずアテニアの事業基盤、コミュニケーション基盤をきちんと作ることが大切だ。それができたらマス展開もあるかもしれない。現状はマスをやっても顧客が漏れていってしまう」
 ─須釜社長の任期は。
 「3年間なので今期が最終年度となる予定だ。その自覚と認識は持っているし、当然、業績面での責任は感じているが、自分の心境としてはあまりプレッシャーを感じていない。むしろワクワクしている。なぜなら、〝最高級の価値をリーズナブルに提供する〟というアテニアの原点に立ち返り、それが具現化されつつあるからだ。それと『アンバサダー クラブ』に寄せられた、お客さまからのお便りにはとても勇気付けられた。就任初年度で従来のアテニアをリセットし、前期から本来アテニアが目指した姿を具現化し始めている。これで膿みは出し切ったと思うので、あとは業績を回復させる」

記事は取材・執筆時の情報で、現在は異なる場合があります。

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