【ミルズインターナショナル  櫻井聡代表取締役社長】 今期売上30億円の見込み 将来はホールディングス化へ(2022年8月11日・18日夏季特大号)

  • 定期購読する
  • 業界データ購入
  • デジタル版で読む

 香水ECのミルズインターナショナル(本社神奈川県)は、30年9月期を最終年度とした「10カ年計画」を上回るペースで業績を上げている。今期の売上高は前期比20%超の30億円の見込みで、香水EC市場でシェアナンバーワンの地位を強固なものにしている。櫻井聡社長に、計画達成に向けた構想や、業績を支える戦略、社員教育のメソッドなどを聞いた。



 ――21年9月期の香水通販売上は前期比24.9%増の24億8900万円。22年9月期は20.5%増となる30億円を見込む。これまでの手応えや今後の成長戦略は。
 前期も今期も、売上高は計画当初を上回り堅調に推移している。10年以上にわたり根強い人気がある「ランバン エクラドゥアルページュ」など、人気商品を中心に在庫を確保し、各ECモールの香水ジャンルにおける「かご」を当社の商品が多く獲得できていることが大きい。
香水は商品の特性上、仕入れは海外からの輸入に依存することが多い。ロシア・ウクライナ情勢によって仕入れの数量・価格ともに高騰の影響は受けているが、在庫を確保しやすい商品の数量調整や、経営努力によって吸収できている。
 ――30年9月期を最終年度とした「10カ年計画」では、将来的にホールディングス化や商社化を目指している。
 ホールディングス化は最終年度までに実現したいと考えていたが、業績が想定を上回るペースで推移しているため、最短だと25年9月期までに実現しそうだ。数年内に社内ベンチャー企業を設立し、ゆくゆくは子会社化していく。社内ベンチャーが目指す形は、香水以外の香りのプロダクトを企画、販売するEC企業。例えばルームディフューザーやカーフレグランスなどが該当する。販売は消費者向けだけにとどまらず、法人向けの卸売りも視野としていく。
 ――現在開発中のプロダクツはどのようなものか。
 伝統工芸の陶磁器を活用したルームディフューザーの開発に取り組んでいる。窯元とつながりがある企業と協業して開発中だ。日本の焼き物は海外にもファンが多いため、国内ECだけにとどまらず、越境ECの販路開拓も構想している。
 ――アマゾンの物流サービス「FBA」を利用する一方で、自社物流の強化にも意欲的だ。
 社内に設けている物流ライン――当社では商品の梱包、出荷のさらなる最適化を推進している。物流スタッフの経験値や能力値はばらばら。これを高水準に引き上げるため、スピード感があり正確なスタッフの目線の動きや体の動かし方を機械で自動分析し、そうでないスタッフとの差を可視化して、実力差を埋めていく仕組みづくりを検討している。
FBAをはじめとした外注の物流システムを効率的に利用することは欠かせないが、競合との差別化を図り収益にコミットするためには、インハウスの生産力や技術力向上が重要な役割を持つと考えている。

■社員教育は
「常識を疑え」

 ――物流スタッフだけにとどまらず、社員の育成にはどのように取り組んでいるのか。
 社員には「常識を疑え」という意識を啓発している。従来を踏襲したプロモーション、商品ラインアップ、顧客コミュニケーションの構築では、大きな成長を見込むことは難しいからだ。常にイノベーションを持って新しいことに挑戦してほしいと思っており、それを社員にも伝えている。
 これまでは創業当時のメンバーを事業の中核に据えていたが、足元で社内構成を刷新し、若手のメンバーを中心とした人事に大なたを振るった。手が空いた社員は部署を横断して手助けに入ることで、他部署のオペレーション改善につながる風土を作っている。
単純にマンパワーが上がるだけではない。普段は商品開発を担う人が物流ラインに参加することで、さらなる効率化につながるアイデアを生み出すことができる。 
 新入社員の育成は基本的にOJTだ。一人一人の特性を見ながら、ときには新たに出店するECモールの商品出品から出店ページの構築まで、研修として全て一任することもある。個々の意欲を生かした適材適所を心掛けている。

■新作「リブート」は
目標上回る推移

――7月3日に、「モテ香水」として引き合いが多いシリーズ「ライジングウェーブ ゼロ」シリーズから新作「ライジングウェーブ ゼロ リブート」(以下「リブート」)を発売した。売れ行きの初動はどうか。
 先行予約を含め、7月29日現在の販売数は500本。当初の目標よりも上振れする形で推移している。ECモールのセール企画で前身の商品「ライジングウェーブ ゼロ エクスタシー」に割引を付与したことで受注が伸び、「リブート」にも注目が波及したと考えている。
 現在はユーチューブに動画広告を出稿して認知拡大を図っている。「リブート」だけにとどまらず、新作の発表がけん引する形でシリーズの既存商品全体の底上げが期待できる。継続して積極的なプロモーションに取り組む。

モテ香水のシリーズ新作「ライジングウェーブ ゼロ リブート」

記事は取材・執筆時の情報で、現在は異なる場合があります。

Page Topへ