【公益社団法人 日本通信販売協会 粟野光章会長】 通販業界のモラル高める

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 公益社団法人日本通信販売協会(JADMA、事務局東京都)は20年6月19日付で、第14代会長に高島屋の粟野光章代表取締役専務が就任した。高島屋からの会長就任は、第2代会長を務めた綾元文氏に次いで2人目。就任から半年以上が経過した粟野会長に、会長職の感想や、今年取り組んでいく計画などを聞いた。

■法規制を啓発、健全発展担う

 ─JADMAの会長に就任して6カ月以上が経過しました。会長職の感想は。
 会長職を打診されたのは20年の2月か3月ごろだった。そのころはコロナが今のような状況になるとは予想もしていなかった。この間小売業を取り巻く環境は大きく変化をし、各企業は変革の必要性に迫られている。4月の緊急事態宣言下、高島屋も店舗を1カ月以上閉めることを余儀なくされる中で、ECやカタログ通販はその売り上げを飛躍的に伸ばした。同様に通販業界全体も売り上げの大きな伸びを示している。小売業においてネットとリアルの融合が加速度的に進む時代において、百貨店に身を置いてきた私が、JADMAの会長を務めることになったことは、非常に意義深く、ベストな時期にお声掛けいただいたと思っている。
 ─JADMAとして今年、あるいは21年4月以降の新年度、どんなことに取り組んでいこうと考えていますか。
 まず通販業界全体の水準というか、業界のモラルをいかに高めていくかということに取り組んでいきたい。コロナの影響もあり通販業界への新規参入が増えている。新たに参入される今まで通販を本業でやられていなかった事業者の方々に、通販独自の法規制、具体的には特商法や景表法に基づく法規制を、しっかり啓発して、通販業界全体のイメージダウンにならないようにしていきたい。そのためには、悪質な業者はしっかり排除するとともに、通販市場に入って来られる事業者の方々に最低限の必要な情報を提供し、しっかりモラルを高めて、通販業界全体の信頼度を高めていくことが大事だ。特にECは比較的参入障壁が低いし、個人の方々も事業主となれる時代が来ているので、もともとJADMAが掲げていた「業界全体の健全な発展」という、役割を、しっかり果たしていく。


■条件付き入会で会員数を拡大へ

 ─通販業界のモラル向上の他に取り組んでいくことは。
 「JADMAマーク」をもっと広げていきたいと考えている。通販は業界特性上、悪質な業者が登場しやすいという側面がある広告や媒体に「JADMAマーク」が付いていることが安心・安全の証しみたいなものにならないといけない。JADMAという存在が、消費者保護の自主規制を行ったり、消費者と業界の間を取り持つような存在だということを広く認知させることができるよう取り組んでいきたい。
 同時に会員企業を増やしていきたいと考えている。しかし単に入会企業を増やせば良いというものではない。これまでは倫理委員会で一定の基準を満たしていない企業は会員として承認しないという形を取っていたが、今は会員企業の水準に達していなくても、そういった事業者を取り込んで、その事業者の水準を上げることによって、条件付きで入会を承認するようにしている。具体的には、「1年間講習会を受講すること」とか、「広告表現の修正指導を受ける」などの条件を付けた上で入会を認め、参加企業を増やしている。それによって入会した企業に、今までは知り得なかった業界の情報や知識について、しっかりご理解いただければ、業界全体の水準も上がるものと考えている。このようにして昨年から条件付き入会を増やしている。悪徳企業を入会させるのは論外だが、しっかり事業を営もうとしている事業者については、すべて突き放すのではなく、前向きに条件を付けて入会してもらう。入会基準のハードルは下げないが、条件を付けるということだ。


■相談事に対応し会員と情報共有

 ─今年は特商法の改正が予定されており、法規制への対応も求められます。
 本来、お客さまにとっていいサービスであるにもかかわらず、一部の事業者がそれを悪用してしまったがために、すべてを規制するようなことになるのは、業界の発展にならないし、良い芽を摘んでしまうことになる。そのあたりは行政とも連携しながら、法改正はどういう形がベストなのか協議していく。小売業のビジネスモデルにはこれからますます、いろんなアイデアが出てくるだろう。例えば、サブスクリプションみたいな売り方は従来、考えられなかったことだ。こういったことに対して、すべて頭ごなしに規制するのではなくて、どうやればお客さまの安心・安全を阻害しないで普及させられるのか、しっかり検討していきたい。新しい芽を摘まないことが、業界発展のためには必要なことだ。
 ─会長として会員に要望したいことはありますか。
 積極的に協会活動に参加していただきたい。同時に、さまざまな相談事とか悩み事は遠慮なくご相談をいただきたい。JADMAは会員以外の事業者相談もお受けしている。皆さんの抱える問題点を協会の持つ知見やさまざまな情報を使って、一緒に考え、改善、解決をしていく。そのことによって、業界全体を良い方向に引っ張っていくような、そんな役割を果たしていきたい。そうした意味からも業界全体での情報共有は非常に大切であり、通販事業者の方々とのネットワークをしっかり強化し、さまざまな情報交換をしていく。併せて、JADMAが提供しているセミナーや講習会には積極的に参加いただき、業界水準を高めていきたいと考えている。

記事は取材・執筆時の情報で、現在は異なる場合があります。

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