【ダスキン 山村輝治社長】 ”生活調律業”を掲げ、新事業にも積極挑戦

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 ダスキンは、2024年3月期を最終年度とする9年間の長期戦略「ONE DUSKIN」に基づき、訪販グループでは事業コンセプト”生活調律業”を掲げ、「くらしのリズムを整えよう」をコミュニケーションワードとして事業を進めている。訪問販売に加え、ウェブ会員を増やしたり、大手ECモールで商品の一部が購入できるなど、顧客接点を広げる一方で、新事業にも積極的に挑戦している。新型コロナウイルスの影響により衛生に関するニーズが高っている中、山村社長に訪販グループの戦略について聞いた。

■コロナ禍で衛生関連商品の需要増

 ─20年3月期で実施してきた取り組みの総括、「中期経営方針2018」の数値を修正した背景について聞きたい。
 生活調律業への変革を目指し、ダストコントロール商品のレンタル事業、役務提供サービス事業、高齢者向けサービス事業等の事業間の連携を強め、”家族の暮らし総合窓口”へと飛躍するための取り組みを推進してきた。また、新しい取り組みとして、社内外の共創の場「ダスキンラボ」を開設し、また、新事業「ダスキンウォッシュ」(洗濯代行サービス)の検証を、いずれも大阪府内で開始した。共働きや単身世帯・高齢者世帯の増加に伴う需要拡大に応えるため、プロの技術で家庭やオフィス・店舗の清掃を行う「サービスマスター」や家事代行サービス「メリーメイド」など役務提供サービス事業は、新規加盟を促進する活動に注力し加盟店数を増やした。
 20年3月期は、19年10月に実施された消費増税による消費マインドの動揺が続く中、第4四半期(20年1―3月期)は新型コロナウイルス感染症による影響を受けた。この影響を21年3月期は大きく受けると予想しており、中期経営方針2018の数値目標について修正することとなった。
 ─新型コロナウイルスの影響については。
 21年3月期は、期初から新型コロナウイルス感染症の影響を大きく受けている。事業所向けでは、衛生マット、手指消毒剤、空気清浄機など一部の衛生関連商品の売り上げが増加した。一方で、観光関連産業をはじめ、飲食店などの営業時間短縮・休業によって、商品のお届けや、清掃・害虫駆除などの定期サービスが一時休止し、売り上げが減少した。
 家庭市場では、自宅で過ごす機会が増えホコリが目につきこまめに掃除をするようになったためか、返却されるモップに付着するホコリの量が増えている。また除菌モップや非接触の手指消毒剤の需要も高まり、衛生に対する関心の高さを感じている。


■ウェブ会員数は101万人に

 ─顧客接点を増やす取り組みについて、ECモールへの進出の背景、実施後の手応えは。
 顧客ニーズの多様化に応えるための顧客接点としての効果は表われているが、当社はあくまで訪問販売が基本だ。
 訪問時に会えないお客さまの生活スタイルに合わせた取り組みとして、電話で応対する「コンタクトセンター」の機能を強化したほか、会員制のウェブサイト「DDuet(ディーデュエット)」の会員数を前期より27万人増やし、20年3月末現在で101万人とした。
 ダスキンの商品を気軽に使ってみたいという顧客ニーズに応えて、楽天市場やヤフーショッピングなどECモールへ出店し、顧客との接点を広げている。
 ─フランチャイズ(FC)の販売員への教育・研修体制(スキルアップ策)についてはどうか。
 お客さまに寄り添って自ら考え、行動できる組織づくりを目指した実践型の研修パッケージを新たに構築した。集合研修に加えウエブ学習ツールや組織育成担当によるフォローなど、日常の学びと実践により個人の成長から店舗など拠点の成長につなげる。新型コロナウイルス感染症拡大の状況を鑑みながら研修は推進する。
 販売員が、訪問時に商品やサービスを動画などを見せながら説明することを目的としたタブレット端末は、20年3月末現在5840台を導入した。
 ─19年3月期を期初とする3年間の「中期経営方針2018」の進捗について聞きたい。
 家庭市場においては、訪問時に会えないお客さまに情報や特典をお伝えする会員サイト「DDuet」の会員数が100万人を超え、さらなる増加を目指している。事業所市場においては、衛生管理を総合的に提案できるスペシャリスト「ハイジーンマスター」を1668人に増員した。サービスマスターやメリーメイドなどの役務提供サービス事業においては、需要増に応えるために加盟促進活動に注力し、20年3月期に103店を新規出店している。
 ─21年3月期の事業計画は。
 「生活調律業」実現に向けて事業の壁を越え、地域主導の戦略を実施する。地域によって異なる環境や文化に合わせた施策を進める。新型コロナウイルス感染症の影響でテレワークが進み在宅が増えたほか、衛生管理に関する考え方が変わるなどさまざまなことが変化している。事業計画の優先順位も状況に合わせて変えていく。
 ─新型コロナウイルスの影響でFCへの支援策はあるか。
 お客さまへの商品・サービスのお届けを継続的に実施するため、全事業の加盟店とそのスタッフへ約16億円のお見舞金を支援した。
 下半期にはFC加盟店の業績回復に向けた広告販促等も計画している。
 21年4月からは次期中期経営計画が始まる。「ウィズコロナ」「アフターコロナ」に向けて、お客さまに寄り添い自ら考えて行動できる組織を作り、新たな計画を立案・推進する。
 ─販売員(人材)の確保については。
 ダスキンの事業は、人材の確保が重要だ。当社が抱える事業(フードグループ含む)のお仕事を横断的に紹介するサイト「DDuetお仕事ナビ」を昨年まで掲載していた。今年からは、人材募集の開始から採用までをサポートする人材採用センターを設立し、新たな企業採用ページ「ダスキン お仕事ナビ」を開設した。全国のフランチャイズチェーン加盟店の人材募集を集約し、広く知ってもらうことで幅広い人材採用を行っていく。

記事は取材・執筆時の情報で、現在は異なる場合があります。

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