【〈食品宅配〉インタビュー シニアライフクリエイト/高橋洋社長】”医食同源”を掲げ社会に貢献

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 「宅配クック ワン・ツゥ・スリー」をフランチャイズ(FC)展開するシニアライフクリエイト(本社東京都)の業績が好調だ。11月1日からは、各地域の高齢者を対象にしたコミュニティサロン「昭和浪漫倶楽部」の展開に乗り出す。利用者を中心に、地域住民との接点を増やす拠点を設けることで、高齢者の健康寿命の向上に役立てるのが狙いだ。「弁当」という概念から、栄養素に重点を置いた「食事」という考えに切り替えを進める高橋洋社長に、今後の事業方針について聞いた。

 ─増収を維持している。前期はどのような事業方針を掲げたのか。
 前期は「弁当」というカテゴリーから「食事」へ転換を図った期だった。つまり、量(ボリューム)よりも、栄養という考えに切り替えた。高齢者の食事は、タンパク質不足を中心に、低栄養になることが課題となっていた。
 栄養面については、在宅の高齢者にお客さまの家族からニーズが高まっていた。ただ、白米を増やせばいいのではなく、残さずに食べられる量でおかずを他の素材に置き換えるといったことを進めた。
 同時に、ケアマネジャーへの啓もう活動を続けてきたことで、徐々にいい商品を適正な価格で提供するという考えが広まっている。
 当社では、従来の既成概念を取り払い、原価率を9割まで引き上げて、利益を追い求めた原価計算はせずに、栄養素の品質を高めている。当社の株主であるファミリーマートもこうした考えに賛同している。
 ─加盟店数も安定して伸ばしている。
 新規加盟店が9店舗増えたことに加え、当社の栄養素を重視した考え方に賛同してくれる加盟店が増えたことで、食数を安定的に伸ばすことができた。ドラッグストアや医療系、介護系の加盟店が増えている。既存の事業と食を通じたシナジーを生み出したいというニーズが高い。
 食べることで健康につなげるという「医食同源」の考え方で、毎日病院に通うことなく、医療費を削減することができる。こうした考えを進めることで、介護保険や医療保険を成り立たせるといった考えに賛同してくれる加盟店のオーナーが増えているように感じる。7月度の販売実績では、過去最高となる274万食を超えた。当社では、食数を支持率と捉えているが、高付加価値の内容でも着実に食数を伸ばすことができている。
 ─新規加盟店の際の提案トークも変わってきたと聞く。
 健康寿命を高めることで地域財源の圧迫を抑制することができるとケアマネジャーに伝えている。以前は、安否確認や孤独死を防ぐなどの内容を訴求していた。ケアマネジャー向けの勉強会も増やしていることも成果に表れている。
 人材不足が課題と言われるが、加盟店は家族で経営しているケースが多く、目立った影響は出ていない。
 ─コミュニティサロン「昭和浪漫倶楽部」の展開を始める。
 まずは岩手県内や島しょ部に、本社直営で数店舗を設置していく。FC加盟店も運営できるようにし、初年度で30カ所の展開を目指す。
 「昭和浪漫倶楽部」は、当社の宅配弁当を利用する顧客だけではなく、地域住民が集える憩いの場として開放する計画だ。約60平方メートルのスペースを想定し、常駐のスタッフを1人配置する。1人暮らしの人たちがサロンを通じてコミュニケーションを取ることで、健康維持につなげてもらうことが狙いだ。
 サロンでは、弁当を持ち寄って食べられるほか、勉強会や習い事などの開催も予定する。地域の企業から製品やサービスなどをPRするコーナーも設ける。
 これまでは、ケアマネジャーの紹介から新規顧客獲得につなげてきた。サロンへの集客は回覧板を活用することも想定する。サロンを通じ、接点を増やすことで、地域の利用者の開拓につなげていきたい。


【企業データ】
 設立 1999年
 売上高 19年2月期は155億円(FCグループ合計)
 取扱商品 高齢者向け宅配弁当

記事は取材・執筆時の情報で、現在は異なる場合があります。

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